(※画像はイメージです/PIXTA)

足元の金融市場では、米景気急悪化への懸念が後退した一方、米国の「債務上限問題」による“株価急落”“債券のデフォルト”“米ドルの下落(円高)”の「トリプル安」が警戒されていると、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。2011年におきた「トリプル安」再来の可能性について、吉田氏が考察します。

今週の注目点…2011年「米トリプル安」再現の可能性

米政府が議会との債務上限拡大交渉に手こずるなかで、米国債のデフォルト懸念から米国株、米金利、米ドル「トリプル安」が起こったのは2011年7~8月のことでした(図表3、4、5参照)。今回、金融市場はその再現を警戒していると見られます。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表3]NYダウの推移(2011年) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米10年債利回りの推移(2011年) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円の推移(2011年) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ちなみに、2011年7~8月に、NYダウは最大で15%程度の下落となりました。仮に、今回も同じ程度のNYダウ下落が起こるなら、NYダウは3万米ドルを大きく割り込む計算になります。

 

株価は景気の先行指標の1つと位置付けられるので、そのような短期間の急落が起こるようなら、インフレ対策を続けているFRBではありますが、景気の急悪化回避のための利下げを検討する可能性は出てくるのではないでしょうか。

 

この債務上限を拡大し、米国債のデフォルトを回避する期限について、イエレン財務長官は今のところ6月1日頃と説明しています。ただし、5月中旬以降は広島サミット出席などのためにバイデン大統領はワシントンDCを不在にするため、上下両院の日程などと合わせて考えると、実質的な交渉の期限は17~21日頃までといった具合に、もっと切迫している可能性もありそうです。

 

以上のように見ると、今週から来週にかけて、この「米国債デフォルト=トリプル安」リスクへの注目が高まる可能性があるでしょう。

 

米景気急悪化への懸念は今のところひと息ついたものの、一方で米債務上限問題次第では米国株急落などを通じた早期利下げの可能性は残っているというのが最近の状況ではないでしょうか。そういったなかで、米金利は約2ヵ月にも渡り、この間の安値圏で狭いレンジの保合いが続きました(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米2年債および10年債利回りの推移(2023年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

狭いレンジの動きが長期化すると、その保合い放れとともに溜まったエネルギーの発散で一方向へ大きく動く可能性があります。

 

これまで見てきたことからすると、その保合い放れの鍵を握っているのが早期利下げの有無ということではないでしょうか。そして米ドル/円は米金利の影響が大きいため、米金利の保合い放れに追随する可能性が高そうです。

 

以上を踏まえると、今週は米債務上限問題をにらみながら、米金利も米ドル/円も上値が重い展開が続くのではないでしょうか。よって、今週の米ドル/円の予想レンジは132~137円と考えます。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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