米銀危機で金利低下も…金融市場は“まだまだ好景気”
筆者の解釈では、現在の金融市場には、銀行の経営や景気後退への懸念はほとんど感じられません。「まだまだカネ余り、まだまだ強気」です。だとすれば、「今後、引き締めはまだまだ続く」という結論になってしまいます。
たしかに、3月は銀行危機で金利が低下しましたが、大型株(S&P500)は情報技術株を中心に上昇しています。「大型銘柄に資金が逃避している」との解釈は可能ですが、相場全体が上昇しているということは、「(ネットでみて)まだまだお金が余っている=金利は低い」「まだまだ先行きに強気である」ことにほかなりません。「FOMO(fear of missing out:反発を取り逃がしたくない)」の勢いは十分です。
たしかに、3月は実質金利が低下しましたが、期待インフレ率は高いままです。「まだまだ需要=景気は強く、インフレ圧力は残る」との認識でしょうし、だとすれば、実質金利の低下は「今後の経済成長率の低下見通し」というよりも、「緩和的世界への回帰」を反映していると解釈されます(→そうした緩和期待がインフレ期待を支えている)。
たしかに、3月は短期ゾーン中心に金利は低下しましたが、ドルも安くなっており、「質への逃避」としてのドル買いはみられていません。
ゴールドは強いですが、通常の景気後退時は「まずドルに資金が回帰し=絶叫の局面、その後の利下げ→貨幣印刷=救済で不換紙幣の価値が落ちて、ゴールドが強くなる」といったパターンで動きます。
なぜなら、たとえば、新興国を売って、一気にゴールドに換える=すぐに次の収益機会を取りに行くというよりも、まずはベース通貨=ドルに換金することで損失を確定してから、様子を見つつ、次にどうするかを考えるという流れが自然だからです。
だとすれば、ゴールドが強いのも、ユーロや円が強いのも、「質への逃避」ではなく、「金融政策の違い」(=FRBはもうすぐ打ち止め;他国はまだ利上げ続く)を反映するものであり、「マネー・ゲームがまだ続いている」(=これまで有望だった市場から、新しく有望になりそうな市場へ資金を移す)と解釈できます(→それもまだ「本丸の米国景気は底固い」との見方が拠り所になっているでしょう)。
米連邦準備制度理事会(FRB)も、「銀行危機以降の利下げ期待によって、株価が以前の勢いを取り戻す」のを見ていて、同時に「取り付けさえ収まれば、銀行システムは問題ない」と考えているでしょうから、答えは「引き締めを続ける」となるでしょう。