京都で明治8年に創業した「開化堂」という「手づくりの茶筒」を製造販売する老舗企業があります。現在まで約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、職人をはじめとする働く人たちとの接し方において心掛けていることを解説します。

「続く」とは「働いている姿を見せる」ということ

働いてくれる人たちの家族を犠牲しないことを挙げましたが、ここから先はそれに付随した僕からの提案になります。

 

それは、「子どもに働いている姿を見せてみませんか?」「子どもを仕事場から追い出すのをやめてみませんか?」ということです。

 

コロナ禍以降、在宅ワークが始まってから、子どもの問題で結構苦心されている方が多かったといいます。オンラインミーティングなどで大事な話し合いをしているときに「遊んでほしい」と擦り寄ってきたり、急に泣き叫び出したり……。

 

そのたびに「えーっ、大変だ、両方見なきゃ!」「あっちに行ってて!」と慌てているお父さんやお母さんが多かったこともよく聞きました。

 

でも、だからといって、カフェやホテルなど、家から離れたところで仕事をしようとするのは、それはそれで大切な機会をフイにしているような気がしてなりません。

 

というのも、その理由は先程お伝えした僕の小さい頃の話と同じ。

 

子どもながらに、親が働いている姿を近くで見てこられたことが、よい意味で心に残っているからです。この感覚は、親がお店をやっている家で生まれた方には、共感してくださることも多いのではないでしょうか。

 

普段、家でゆっくりしているのと違う、親の働いている姿を見ることで、親というものの存在意義を子どもはより理解するようになります。

 

それは単に「親を尊敬できる」という話ではなく、それぞれの役割が認識できるのです。「大人になるってどういうことか」「社会人になるって何なんだろう」といったことを、なんとなく知る機会にもなるでしょう。

 

子どもが仕事を邪魔するのは人の迷惑になるから困る……という気持ちもわかりますが、僕も実際にオンラインミーティングの際に、相手の方の膝の上にお子さんがちょこんと座っていても、相手の方の事情もわかるし、気にならないどころか、むしろ微笑ましいものでした。

 

それに、子どもは子どもで、親の仕事を見ているうちに、だんだんと「今は大事なときなんだな」と理解します。

 

それだけでも子どもにとっては大きな学びですし、さらにもし時間があれば、「今の人はこういう立場の人で、こういう仕事について相談をしていたんだよ」と説明してあげれば、子どもにとっては、もっと大きな社会勉強になるでしょう。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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