京都で明治8年に創業した「開化堂」という「手づくりの茶筒」を製造販売する老舗企業があります。現在まで約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、職人をはじめとする働く人たちとの接し方において心掛けていることを解説します。

家族だからこそ包み隠さない

家族の意識で働いてもらうことで「らしさ」を体得してもらい、本当の仲間となることで喜びを持って長く一緒に歩んでもらう――。

 

僕としては、それが手づくり茶筒の開化堂が魅力的なモノを生み出すための根幹だと感じています。

 

ですから、まずは家族同然の働いてくれる人たちを犠牲にしないこと。

 

そのためにも、売上や企業の成長のためにたくさんつくることをやめ、売上を先延ばしにし、年間総生産数に合わせて「ごめんなさい、ここまでいったら待ってください」というやり方にする。

 

ある程度の目標が達成できるなら、それ以上はつくらなくていい。売らなくていい。その分、「みんな、休みましょう」ということにしたわけです。

 

それもあって、今の開化堂は残業もほとんどなく、6時過ぎにはみんな帰っていきます。毎週、生産会議を行い、「この週はこれだけつくろう」という計画に合わせて、無理なく仕事をする道を選べるようになりました。

 

また、そうはいっても、働いていれば、家族であれ仲間であれ、まったく不満が出ないことはないものです。

 

ですから、ときには、ネガティブな意味でも、腹を割って話す覚悟が必要になります。

 

それが具体的には、働いてくれる仲間との間での個人面談です。

 

僕は年に2回行っているのですが、そのときは雑談しながら「○×に困ってる」とか、「普段ちょっと言いづらいけどこんなことを思ってるんです」みたいなことを聞くことからスタートしています。

 

そして、僕からも、今回の賞与の額を悩んだ話、企業というものがどうやって働いてくれる人にお給料を払っているのかの仕組み、創業以来の茶筒づくりと新しいラインナップづくりのバランス、開化堂の今の状態、といった経営面や僕自身の考え、金銭面のシビアなことまで、包み隠さず正直に話す。

 

開化堂にとって職人は財産なので、それぞれのやりたいことを聞いて、そのために必要なことがあれば、こちらから要求もしますし、もう少し目線を変える必要があれば、そのことも伝える。どんなことをどうしてほしいのか、それは開化堂として可能なのか、とにかくいつも聞き、僕の考えはすべて明らかにする――。

 

やはり「家族」であれば、何度も何度も話し合っていく必要があるわけです。

 

結局、相手との関係を築いていくには、こうした正直な意見のぶつけ合いを繰り返していくしかありません。

 

本当の家族においても同じだと思いますが、結局は相手のために使う時間の量が、その関係を高めていくのです。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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