2,300人を解雇に…
昨年から続く世界的な景気後退の波が収まる気配のないベトナムでは、多くの企業が一時解雇に踏み切っている。
スポーツ用品メーカーであるPouYuen Vietnam社も景気後退のピンチを感じている企業の1つだ。同社は、短期的に社内における2つの部門で2,300人のポストを解雇し、階級自体を削減する計画を発表した。
また、衣料品メーカーのAmpfield Vietnam社は、700名から100名への人員削減を余儀なくされた。同社は今回の措置の原因として、受注量の減少を挙げている。同社の労働組合リーダーであるヴォー・ティ・サウ氏は、「景気後退が引き金となり、受注が激減したせいで、私たちは大きな打撃を受けています」と述べた。
またサウ氏は、「同社は操業の遅れを取り戻すために新たな受注を模索している」と語った。従業員は交代制で働きながら、当面の仕事をこなしていくという。
別の衣料品会社であるDony Garment社も、押し寄せる人員削減の波に追随した。パートタイムの従業員を削減し、フルタイムの従業員だけを残してなんとか基盤を固めた。
同社のファム・クアン・アイン取締役は、「今回の当社の動きは、不況による受注減少に対処するための努力の一環である」と述べた。また、「取引先があまりにも低い入札価格を提示したため、いくつかの取引が失敗に終わった」とも述べている。
EUは約60%、米国からは約40%も減少
ホーチミン市ビジネス協会(HUBA)によると、主要な衣料品輸入国であるEUからの注文は約60%も減少しているという。一方、米国からの注文は約40%減少している。
こうした需要の低迷が売れ残り在庫を増やし、入札価格を押し下げる結果となった。繊維製品における売れ残り在庫の総量は25%近くに達している。一方で、トレーダーは通常の半額ほどの入札価格を提示している。
ベトナム労働総同盟(略称VGCL。ベトナムで唯一の全国労働組合センター)が作成した報告書によると、これまでに約500社が景気後退の中で人員削減を余儀なくされ、約64万人の労働者が窮地に立たされているという。
木材加工業では、約70%の労働者が解雇または労働時間の短縮を余儀なくされ、大きな打撃を受けた。次いで、製造業が約50%、靴部門が約25%、繊維部門が約20%となっている。
ビリオン・ハング社で17年間働いてきたドゥオン・ティ・ビック・トゥーイーさんは、まさか自分が解雇されることになるとは思ってもいなかったという。悪い知らせが届いたとき、彼女はショックを受け、打ちのめされた。
「自分はもう年をとっているので、新しい仕事を見つけるのは簡単ではない」(トゥーイーさん)。彼女のような人がより簡単に適切な仕事に就けるよう、当局が対策を講じることを望んでいる。
PouYuen社に20年勤めたグエン・バン・タムさんも、解雇の発表後、焦りを感じていた。20年間の勤続に見合った退職金を待つ間、彼はGrab(ベトナムやタイで主流のタクシー配車サービス)のドライバーとして働き、生活費を捻出している。