2010年代:アプリ1つで生活が完結する時代に
2010年代のスマートフォンの普及を機会として、BATはさまざまなサービスが生み出され消費者に提供されるエコシステム(生態圏)のリーダーとしてさらなる成長を遂げた。
消費者の生活が大きく変わった…アリペイ・テンセントの「スーパーアプリ」
エコシステム構築の中核を担ったのが、アリペイやテンセントの微信(WeChat)に代表されるスーパーアプリである。スーパーアプリとは、日常生活に必要なあらゆる機能を統合して提供することを目指すアプリであり、メッセージの送受信から送金、ネット通販、決済などもスーパーアプリ一つで完結できる。
スーパーアプリがプラットフォーマーと消費者との接点の役割を果たし、生活シーンを囲い込む競争が行われた。主戦場は食べる、移動するなど、生活に深く浸透したオフラインのサービスの提供だった。
テンセントの微信支付(WeChat Pay)と連動してフードデリバリーを提供した美団(メイトゥアン)や、配車サービスの滴滴出行(ディディチューシン)が急成長したのは、その典型である。
スマホを入り口にオフラインのサービスにつなげる“O2O(Online to Offline)”が、生活のさまざまなシーンに深く普及したことがデジタル中国の特徴といえる。O2Oの浸透により、中国ではネットからリアルにまたがってさまざまなデータを取得することが可能になり、膨大な人口やその多様性と相まって、AI(人工知能)アルゴリズム開発のための良質な実験場となる条件が整っていった。
TikTokを生んだ「バイトダンス」が急速に成長したワケ
2010年代に設立された第二世代プラットフォーマーの代表が「TMD」とも称される宇節跳動(バイトダンス)、美団および滴滴出行である。
バイトダンスはレコメンド技術に集中投資をしてコアコンピタンスとして確立し、ニュースアプリ「今日頭条」のほか動画配信アプリ「TikTok」で若年層に強い顧客基盤をつくって、世界最大のユニコーン企業に成長している(注3)。
TMDに共通して見られるのは、2010年代のスマートフォン普及や⾼速無線通信「4G」の導⼊といった「技術の進化」を機会として、新たな「事業参⼊ポイント」を⾒つけ出し、差別化の武器としてAIアルゴリズムへの開発投資を積極的に行ったことだ。
キャンペーンなどを駆使して顧客やパートナー企業の規模を確保し、集まった⼤量のデータを活⽤してAIアルゴリズムの精度を磨くことで、顧客の満⾜度や業務効率を⾼める好循環をつくり出すことに成功した。技術志向と営業志向という異なる⽂化を経営者のトップダウンで「両⽴」させ、経営スピードを確保している。
異なる要素を一つの組織マネジメントで「両立」させるこの取り組みは、デジタル化が深化する中で、ファーウェイ、小米、アリババなどデジタル中国を牽引する企業の経営変革で共通して観察される特徴である。
(注3)出所:CB INSIGHTS “The Complete List Of Unicorn Companies”.
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら