2016年~:ネットビジネスの大きな転換点へ
中国では2010年代後半から経済成長が減速期に入り、インターネットビジネスは大きな転換点を迎える。
この頃の中国の経済政策を見ると、2014年には習近平指導部が「新常態」という概念を打ち出し、15年には「供給サイドの改革」が強調された。中国全体が産業の構造転換を模索し始め、その柱として、政府は「中国製造2025」や「インターネット+(プラス)」などの産業政策を掲げた。
プラットフォーマーも経済の「量から質への転換」、「経済成長期から成熟期への移行」に対応したビジネスモデルの変革が必要となった。
新たなネットビジネス戦略の中心は「既存産業の再構築」へ
経済環境の変化に伴うビジネスモデル変革にどう挑むのか。
2016年に美団の王興・最高経営責任者(CEO)、テンセントの馬化騰CEOらは、「中国インターネットは第2ラウンド(中国語:下半場)入りした」として、戦略の重点を「企業(供給サイド)の効率化を支援」、「既存産業を再構築」することに転換すると宣言した。
具体的には、テンセントは「消費インターネットから産業インターネットへ」を提唱し、コンテンツ、製造、金融、医療などの領域において、伝統的企業との提携を通じた「デジタルと実体経済との融合」を模索し始めた。
美団は飲食を中心とする「生活総合プラットフォーム」を構築するために、飲食店の経営安定化を支援し、さらに食材の産地までサプライチェーンをつなげようとしている。
アリババは、売れ筋の商品を持つ企業を囲い込むことで売り上げを伸ばす勝ちパターンにほころびが生じつつある。そこで、既存産業をデータ駆動型で消費者ニーズを起点とする形に再構築する取り組みとして、「新小売」、「新製造」、「新金融」というコンセプトを打ち出し、実践面においてさまざまな試みを重ねている。
さらに自社を「テクノロジー企業」と位置付け、AI、ビッグデータ、ブロックチェーン、量子計算などの技術開発を行ってこの成果をクラウド上で提供することで、企業のDX/業務変革を支援している。
BATなど中国プラットフォーマーは中国の消費者向けサービスで成長してきており、日本企業にとっては中国消費者をターゲットとするビジネスの販売チャネルとして活用する存在だった。
この関係性は現在も続いているが、2010年代後半からは、製造業など日本企業が強みを持つ領域で、中国プラットフォーマーが既存企業と「競争と提携」をしながら産業の再構築を進め、さらにその実践経験を持って東南アジアなど海外市場に進出していることに注目すべきだ。
中国伝統的企業のDXも、やはり「プラットフォーム」がベースに
プラットフォーマーの参入を受ける流通、金融、製造など既存業界の企業も、「デジタル技術」という武器を得て、ビジネスモデルや業務プロセスの変革に取り組んでいる。
中国の伝統的企業のDXの特徴として、既存の業務にプラットフォーム・モデルを付加することで、社外に広がるリソースを活用して新たなビジネスを創出する試みが行われている。伝統的企業のDXにおいても、「プラットフォーム志向」がベースにあるのだ。
例えば、中国工商銀行、建設銀行など中国の五大銀行はいずれも2015年からトップダウンでプラットフォーム戦略を打ち出している。アリペイ、WeChat Payに顧客接点を奪われて顧客情報を得られなくなることに危機感を抱いたことが背景だ。
特徴的なのは、各行ともにEC(B2C)マーケットプレイスを銀行自らが運営することによって、取引流、物流、金流をつくり出し、顧客との接点を再構築しようとしたことだ。
また、中国の大手自動車メーカーは、日本のトヨタ自動車と同様に、自らのポジションを「モビリティサービスを提供する事業者」に変革していくことを打ち出している。サービス事業化の取っかかりとして配車サービス・プラットフォームの運営に取り組んでいる。
大手国有自動車メーカーの第一汽車、東風汽車、長安汽車が合同でT3出行を、広州汽車は如祺出行(ONTIME)を、上海汽車は享道出行を、吉利控股は曹操出行(CAOCAO)を、それぞれ配車サービス事業会社として設立している。
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