“シリコンバレー銀行(SVB)破綻”で市場動揺も「いつものこと」…マクロストラテジストが“冷静”な理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

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シリコンバレー銀行(SVB)破綻による動揺続く

先週、米国の金融市場では、金融機関の破綻をきっかけに動揺が生じました。「いつもどおり」、いったん生じた動揺はしばらく続くでしょう。

 

この破綻が生じた背景は、「低金利が、あるセクターのブームを呼び、その後の金融引き締めが、そのブームを終わらせる」という点で、「いつもどおり」の動きです。

 

ブームの崩壊は大きなうねりとなり、まもなく金融市場全体に波及しました。そして、そうした波及を止めるべく、米連邦準備制度理事会(FRB)や財務省は、預金の全額保護や流動性の供給といった救済・支援策を発表し、金融市場に介入しました。これもまた「いつもどおり」の動きです。

 

中央銀行が引き締めを行えば、少なからず、破綻する企業や失業する家計が出てきます。そして、これらの主体に融資をしていた金融機関では不良債権が増えるため、引当金を積み、業績が悪化します。「いつもどおり」でいえば、景気後退の訪れが視野に入ります。

 

投資家はこうした「いつもどおり」の景気サイクルを認識し、十分な長期・分散・積み立て投資によって、今後の変動性の高い局面を乗り切っていく必要があるでしょう。

投資家が押さえておきたい6つのポイント

特殊な例

シリコンバレー銀行やシルバーゲート銀行、シグニチャー銀行やファースト・リパブリック銀行など、金融市場で大きなストレスを受けて破綻したり、米連邦準備制度理事会(FRB)からの流動性支援を受けた銀行は、①顧客基盤と、➁資産構成に大きな偏りがあるため、特殊な例と考えられます。

 

動揺は残る

とはいえ、今後とも、金融セクターや金融市場全体で動揺が続く可能性があります。銀行は、カウンターパーティー・リスク(取引先リスク)を減らすために銀行間貸出を絞る可能性があり、また、漠然とした「信用収縮への不安」も残るでしょう。

 

当局の支援・保護体制は万全

しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)や財務省は、流動性の支援や預金の全額保護によって、金融市場と家計の不安を取り除く施策を打ち出しています。そして、仮に事態がさらに悪化すれば、利上げの停止から利下げへの転換、量的金融緩和(QE)や信用緩和への移行も可能です。すなわち、FRBや財務省は、十分なバックストップを有しています。

 

テクノロジーと暗号資産が今回のブームの主役だった

ここ数年の情報技術やバイオサイエンス関連のスタートアップ企業、ならびに暗号資産関連企業は「低金利の申し子」でした。金利の上昇により、ブームは崩壊しつつあり、今後も、これらの企業に対する与信や投資の収縮が避けられないでしょう。また、そうした企業に資金支援を実行したベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ・ファンドも同様です。

 

通常の景気サイクルとまったく同じ

中央銀行が引き締めを行うときに、企業の破綻や失業の増加は避けられません。金融機関での不良債権の蓄積や引当金の増加(=損失の事前計上の増加)も動揺です。「低金利が招くブーム」→「金融引き締めによるブームの崩壊」といったように、通常の景気サイクルとまったく同じことが起きているといってよいでしょう。

 

3月は小幅利上げか据え置き

FRBによる「今月の0.5%利上げ」の線は消えたように思えます。「0.25%の利上げ」か、金融市場の動揺が続く場合には「据え置き」もありえるでしょう。金融市場の目線は「インフレ」より「景気後退」に急速に移りつつあるようにみえます。結果として、長期金利は上がりにくいと見込みます。

 

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    フィデリティ投信株式会社
    マクロストラテジスト

    大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了後、農林中央金庫にて、外国証券・外国為替・デリバティブ等の会計・決済業務および外国債券・デリバティブ等の投資・運用業務に従事。

    その後、野村アセットマネジメントの東京・シンガポール両拠点において、グローバル債券の運用およびプロダクトマネジメントに従事。

    アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年にJ.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社、2019年同社マネージング・ディレクターに就任。ストラテジストとして、個人投資家や販売会社、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。2020年8月、フィデリティ投信入社。

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    連載フィデリティ投信のマクロストラテジストによる「マーケット情報」

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