SVB破綻は「全米史上2位」の規模
SVBを傘下に持つ「SVBフィナンシャルグループ」の基本情報
・1998年にナスダック市場に上場。
・イスラエル、イギリス、アイルランド、ドイツ、カナダ、デンマークなどにオフィスを構えるほか、中国に合弁企業を持つ。
・また、グループ傘下に、商業銀行部門(シリコンバレー銀行)、投資銀行部門(SVB証券)、ベンチャーキャピタル投資部門(SVBキャピタル)、ウェルスマネジメント部門(SVBプライベート)を持つ。
・連結総資産2,117億ドル(約28.5兆円;資産規模で全米16位の銀行;2022年末時点)。
・連結従業員8,500人以上(2022年末時点)。
・主要な顧客は、テクノロジーやバイオサイエンスなどのスタートアップ企業、それらの企業の経営者、ベンチャーキャピタルなど。
・今回の破綻は、全米史上第2位の規模(1位は、2008年のワシントン・ミューチュアル)。
SVB破綻の背景にある「投資家のカネ余り」
まず、毎度毎度の低金利と「投資家のカネ余り」があった。
振り返ると、①2019年夏には、ディスインフレの見通しが強まって、オーストリアの100年債の利回りが0.5%に近づいたり、ドイツが30年債をゼロ・クーポンで発行され、世界で約15兆ドルの債券がマイナス金利に沈んでいると報道された。
その後、➁2020年に入り、新型コロナウイルス・パンデミックが生じ、主要国はゼロ金利政策と巨額の流動性供給、財政出動を実行した。
こうした数年間の流れに呼応するように、人工知能(AI)やバイオサイエンス、フィンテック、暗号資産などのブームが生じた。SPAC(特別買収目的会社)を通じた上場もブームになった。
「カネ余り」の投資家は、そもそもゼロ金利下で毎期ごとにインカムを得られない状態であったので、(向こう10年くらいは収益もキャッシュフローも生まない、あるいは、赤字で追加出資が必要な)スタートアップ企業に投資することも十分に正当化された。→すなわち「グロース企業のブーム」が生じた。
ベンチャーキャピタルに巨額の資金が集まった。スタートアップのテクノロジー企業は必ずしも多くの資本を必要としていない企業も少なくなかったが、(投資先を見つけて投資をしないと収益が上がらない)ベンチャーキャピタルはこぞってスタートアップ企業に資金を提供した。→それでも投資先が見つからずに、ファンドに残される待機資金、いわゆる「ドライパウダー」の金額が話題になった。
スタートアップ企業は、ベンチャーキャピタルからの出資を受け、必要のないキャッシュを持った(→そのキャッシュがSVBなどに預金された)。そもそも彼らは資金需要に乏しく、しかも十分な資本・出資があったため、デット・銀行借入や社債発行による負債の需要はなかった。
結果として、SVBには、口座を開設した顧客(スタートアップ企業、その経営者たち、ベンチャーキャピタル)から巨額の預金が流入したが、上記のとおり、そうした顧客たちには資金需要がなかった。