(※写真はイメージです/PIXTA)

1990年代のバブル崩壊以降の日本企業は、業種・業態や企業ごとの競争力の強弱の差はあれ、大きく変わることが求められてきました。経営コンサルタントの井口嘉則氏が著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

日本企業に必要な「改善・改革・変革」

■コロナ・デジタルで変わらざるを得なくなった

 

今回、コロナショック等により、従来の対面を前提とした「職場で仕事をする」スタイルから、「リモートでオンラインで仕事をする」スタイルに変えざるを得なくなっています。DX化の旗印の下、日本での働き方、仕事の仕方も大きく変わらざるを得なくなっています。

 

日本人は、誰か特定のリーダーの意志で変えようとすると、その人に批判が集まり、その人が失脚すれば、変わらないままとなってしまいがちですが、今回のコロナのように、感染症という人が出発点ではないものについては、「阪神淡路大震災」や「東日本大震災」「集中豪雨・洪水」対応のように、「仕方がない」ということで諦め、変わる方を選択します。

 

今回のコロナショックは、そういう意味では、日本人の就業観、仕事観を変えるよいきっかけになるかもしれません。

 

また、他国民に比べ、人目を気にする日本人ですから、諸外国に比べIT化の遅れが目立っていると、これは恥ずかしいので何とかしなければいけない、と思うのではないでしょうか?

 

日本は、先頭に立って引っ張るのは得意ではありませんが、遅れを取り戻すとか、追いつけ追い越せという後追いに強い民族のようですから、コロナ関連対応の諸外国との比較は、いいカンフル剤になっているかもしれません。

 

■変革・改革が求められる日本企業

 

では、どの程度変わる必要があるのでしょうか? 90年代のバブル崩壊以降の日本企業は、業種・業態や企業ごとの競争力の強弱の差はあれ、大きく変わることが求められてきました。

 

変わらなければならないことは、程度によって、改善、改革、変革と分かれてくると思いますが、私は、改善・改革・変革の三つの言葉を、次のように使い分けています。

 

改善:物事を徐々に良くすること

この言葉は、日本のメーカーのQC(Quality Control: 品質管理)の考え方とともに、「改善活動」通称KAIZENとして、海外にも広がりました。

 

環境変化が緩やかで、技術革新も少ない中では、この改善を続けていけば、ある程度の競争力を維持することができます。英語ではImprovementを当てます。

 

改革:物事を大きく変えること

改善が徐々に変えることなのに対して、改革は、急激に大幅に変えます。よく改革目標に30%アップとか、30%ダウンのような大きな目標が掲げられます。

 

英語では、改革のことをReformと呼びます。

 

変革:物事を大元から変えること

変革の方が改革よりも変え方が大きくなります。英語でTransformationという言葉が使われたりもします。

 

改善の意味合いはお分かり頂けていると思いますが、改革と変革の違いは、企業事例でいうと、カルロス・ゴーンによる日産の改革が改革の典型的な事例です。一方、変革はというと富士フイルムの古森重隆さんによる変革が典型的な事例です。

 

違いは何かというと、日産自動車の場合には、本業である自動車で儲からなくなっていたものを儲かるようにしました。本業は変わってないわけです。それに対して富士フイルムの場合には、もともと写真用フイルムで世界第2位で国内シェアが6~7割あり、儲け頭だったわけですが、それがデジカメ化により10分の1程度に縮小してしまい、「本業消失」という中で、本業の転換を行い、生き残ったわけです。一方の世界シェア1位のコダックは、米国破産法第11条の適用を受けてつぶれてしまいました。

 

このように、本業を変えないまま、大きく変えることを「改革」と呼び、本業が変わるほどの大きな変化を「変革」と呼ぶこととします。

 

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※本連載は井口嘉則氏の著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再構成したものです。

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