(※写真はイメージです/PIXTA)

1990年代のバブル崩壊以降の日本企業は、業種・業態や企業ごとの競争力の強弱の差はあれ、大きく変わることが求められてきました。経営コンサルタントの井口嘉則氏が著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

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トップダウン手法は日本的経営になじまない

日本で大きく改革を成功させた事例は、いうまでもなくカルロス・ゴーンですが、20年間の治世の中で、だんだんと私腹を肥やし、不正を行ったので、ついには罪を問われ、追放されてしまいました。ですので、結果的には、名経営者とは呼べないのですが、少なくとも最初の5年間は、目を見張るような改革を実現してみせたのは事実で、その後多くの経営者が、V字回復として彼の手法を模範としました。

 

日産自動車のように、日本の自動車産業は、国際的な競争力があっても、個々の企業で見ると経営に優劣があり、時として改革が必要になります。

 

また、自動車産業全体でみても、CASE(C〔Connected〕:自動車のIoT、A〔Autonomous〕:自動運転、S〔Shared & Services〕:所有から共有へ、E〔Electric〕:電気自動車)と呼ばれる、電動化や自動運転などの100年に一度といわれる大変革期にあり、トヨタ自動車や本田技研でも技術革新を伴う変革が求められています。

 

国際的な競争力がある自動車産業においてすら、変革が必要になっているのですから、メーカーに限らず、その他の産業においても、変革または改革が求められていることはいうまでもありません。

 

そうした中で、一つ重大な問題があります。日産自動車にみられたように、日本企業は、総じて改善は得意なのですが、改革や変革が苦手であるということです。

 

日本的経営の特徴の一つにボトムアップ、下から上に提言を行うというのがあります。

 

改善活動は、このボトムアップにフィットした手法です。現場にいる人たちが、日々、現物を見ながら、現実を直視しているので、いろいろな改善の視点が出てきます。それを上に改善提案として上げて、OKが出たら取り入れるということを積み重ねていくわけです。

 

私自身も、日産自動車時代、新入社員としてコンピューター部門に配属されていた時に、提案シートを書けと言われたので、たくさん書いて出したら、難なく採用されて、提案王というようなミニ楯をもらって、その簡単さに驚いたことがあります。

 

一方、改革や変革は、トップダウンで行う必要があります。痛みを伴う改革を行わなければならなくなるため、なかなか下からは提言しにくいのです。また下から上げても、部分しか見ていない提言内容だと、全社的な採用が難しくなります。大きく変えるには、全社的な視点で見て、トップダウンで意思決定を行い、多少強引にでも実行しなければなりません。

 

このトップダウン手法は、日本的経営のボトムアップとは馴染みません。

 

また経営者も、下から順調に出世してくると、大きな改革経験がないまま、上に就いてしまいますので、改革が必要になっても、それがうまくできるかどうか分からないので、ついつい後回しにしてしまうということになりがちです。

 

ちょうどカルロス・ゴーンを連れてこざるを得なかった当時の塙社長のように「自分にはとても、この大きな日産グループを改革できないので、ゴーンに来てもらった」と言っていたように、大会社の社長になるような人材でも、改革経験がない、改革できる自信がないとなってしまうのです。

 

このように改革や変革が必要でも、その旗振り役となるべき経営者が、経験がない、やり方を知らない、自信がない、だからやる気がないという問題点があるのです。

 

このことは、小さな組織においてもいえます。小さな改善を積み上げるのは得意ですが、大きく変えることにはリスクも伴うので、二の足を踏むのです。

 

井口 嘉則
オフィス井口 代表

 

 

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※本連載は井口嘉則氏の著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再構成したものです。

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