(※写真はイメージです/PIXTA)

DXによる業務改善を進めていくなかで、思ったような効果が出ないという企業は少なくありません。このような場合において重要になるのは、PDCAサイクルのうち「C」と「A」の部分だといいます。本記事では不動産販売事業を経営する中西聖氏が、自らのDXの失敗経験をもとに、DXにおけるPDCAサイクルについて詳しく解説します。

「C」と「A」の段階でしっかり見切りをつける

アプリケーションの導入効果を検証するCとAでは、コストや工数が削減できたか確認したり、想定した効果が得られているか現場にヒアリングしたりする作業が重要になるだ
ろう。また、効果が出ていない場合には、そのアプリケーションに固執しないようにする
ことも重要だ。


効果が出ていないアプリケーションは、改善によって効果を高めることができるかもし
れない。しかし、改善を重ねても結局のところたいした効果を生まない場合もある。その
ために時間とお金を掛けるのはもったいない。


PDCAを回し続けることは重要だが、その過程では、常に見切りをつけて捨てるとい
う選択肢をもっておかなければならない。「check」によって効果が見込めず、改善の余
地がないと判断した場合には、しっかりと「action」の段階でやめる。つまり、P、D、
Cと進んできた次の判断として、改善を目指すAと、改善せずにやめるAがあるというこ
とだ。


PDCAは魔法ではない。ダイヤモンドの原石は磨き続けることでダイヤになるが、石
を磨いてもきれいな石になるだけでダイヤにはならない。その事実を踏まえておかないと
「やめる」選択をしないまま思考停止状態でPDCAを無駄に回してしまう。

 

開発してしまったから失敗としたくないのか、導入時に外部との議論に労力を使ったからなのか、提案者に気を使うからなのか、やめるべきと提言する役割の人がいないからか、効果があまりないものが放置される。そして無駄なアプリケーションが増えることで、最終的に会社の判断としてDXしたところで意味がないという思考に陥ることもある。

 

CRMシステムを例にすると、使えないオブジェクトを捨てる視点がないせいで、UIが複雑になり、UXが下がり、それがシステムが使われなくなる原因になる。重要なのは、改善するか見切りをつけるかの判断ポイントとなるCだ。


例えば、自社で作ったアプリケーションがいまいちなら、その質を高めるPDCAを回すより、外注したほうがよいかもしれない。自動入力のアプリケーションがいまいちであれば、PDCAで改善できる可能性もあるかもしれないが、アルバイトを雇って入力してもらうほうがスピードや正確性の面でよいかもしれない。

 

こういった判断もDXリテラシーの向上によってできるようになる。導入効果の見積もりと、アプリケーションの性能を見抜く力が高くなることで、このアプリケーションはさらに改善できる、このアプリケーションは諦めようといった判断力が高くなるのだ。

 

CAの効果を高めるコツとしては、PDを担当した人とは別の人がCの調査をする機能をもつようにすることだ。できれば人事評価などにも利害関係がない人がいい。PDで導入した担当者は効果があるはず、というバイアスが掛かりやすいため、冷静な評価ができにくいのだ。

 

中西 聖

プロパティエージェント株式会社

代表

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

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