コロナ禍で明るみに出たデジタル化の遅れ
また、コロナ禍では、デジタル化の遅れが明るみに出ました。たとえば、東京都では当初、各保健所がファックスで新型コロナウイルス感染者の数を報告しており、データによる迅速・正確な集計や情報共有がなされていないことが問題になりました。
また、新型コロナウイルス対策として、政府が2020年に実施した1人一律10万円の特別定額給付金では、オンラインで申請されたデータと受給権者リストの自動照合ができず、職員は目視による照合作業に追われ、多くの自治体がオンライン申請の受付を停止しました。その結果、「オンラインよりも郵送のほうが早い」というありえない状況が多くの自治体で発生しました。
民間でも、テレワークの導入は進んだものの、在宅では処理できないプロセスも多く、また、ハンコ承認や紙の書類処理のための出社を余儀なくされた人が多く出ました。
日本企業は「守りの姿勢」に入りすぎている
生産要素以外で、「TFP(全要素生産性)」の低下も労働生産性の低迷を招いています。経済学の教科書によると、TFPは技術進歩やイノベーションなどにより、経済が資源を利用する際の効率性を反映しているとされます。
企業経営のあり方、経営の質、さらには働き方や雇用制度などもTFPに影響を与えます。ここでは、企業経営のあり方に焦点をあててみましょう。
近年の日本企業の行動をみると、「守りの姿勢」となっていることが目を引きます。デジタル化の遅れや従業員への教育・訓練費の低下などに代表されるように、企業による資本や人への投資が低迷しています。
他方、企業は内部留保を積み上げています。内部留保とは、売上高から原材料費や人件費などの費用を引き、さらに法人税や配当を支払った後に残った利益を積み上げたものです。なお、会計用語としては、内部留保という言葉はなく、利益余剰金と呼ばれます。