経営者の75%が「売上成長見通しに自信なし」の悲惨…日本経済の停滞を招いている2つの理由【元IMFエコノミストが解説】

経営者の75%が「売上成長見通しに自信なし」の悲惨…日本経済の停滞を招いている2つの理由【元IMFエコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本においては、物価高にも関わらず賃金がほとんど上がりません。この状況が作り出された原因とは一体何なのでしょうか。本連載では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏が、著書『51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因』(PHP研究所)から日本経済の問題点について解説します。

コロナ禍で明るみに出たデジタル化の遅れ

また、コロナ禍では、デジタル化の遅れが明るみに出ました。たとえば、東京都では当初、各保健所がファックスで新型コロナウイルス感染者の数を報告しており、データによる迅速・正確な集計や情報共有がなされていないことが問題になりました。

 

また、新型コロナウイルス対策として、政府が2020年に実施した1人一律10万円の特別定額給付金では、オンラインで申請されたデータと受給権者リストの自動照合ができず、職員は目視による照合作業に追われ、多くの自治体がオンライン申請の受付を停止しました。その結果、「オンラインよりも郵送のほうが早い」というありえない状況が多くの自治体で発生しました。

 

民間でも、テレワークの導入は進んだものの、在宅では処理できないプロセスも多く、また、ハンコ承認や紙の書類処理のための出社を余儀なくされた人が多く出ました。

日本企業は「守りの姿勢」に入りすぎている

生産要素以外で、「TFP(全要素生産性)」の低下も労働生産性の低迷を招いています。経済学の教科書によると、TFPは技術進歩やイノベーションなどにより、経済が資源を利用する際の効率性を反映しているとされます。

 

企業経営のあり方、経営の質、さらには働き方や雇用制度などもTFPに影響を与えます。ここでは、企業経営のあり方に焦点をあててみましょう。

 

近年の日本企業の行動をみると、「守りの姿勢」となっていることが目を引きます。デジタル化の遅れや従業員への教育・訓練費の低下などに代表されるように、企業による資本や人への投資が低迷しています。

 

他方、企業は内部留保を積み上げています。内部留保とは、売上高から原材料費や人件費などの費用を引き、さらに法人税や配当を支払った後に残った利益を積み上げたものです。なお、会計用語としては、内部留保という言葉はなく、利益余剰金と呼ばれます。

次ページ「内部留保」が経済成長に悪影響を及ぼすワケ
51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因

51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因

宮本 弘曉

PHP研究所

●この30年で平均所得は100万円下落……なぜ日本の賃金は上がらない? ●理由は、国民が平等に貧しくなる「未熟な資本主義」にあった! ●元IMFエコノミストがデータで示す「歪んだ経済構造とその処方箋」! 物価の高騰、…

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