「第25回世界CEO意識調査」の興味深い調査結果
興味深いデータがあります。世界的なコンサルティングファームであるPwC(プライスウォーターハウスクーパース)が世界89カ国・地域の4446名のCEO(うち日本のCEOは195名)を対象に2021年10月~11月にかけて実施した「第25回世界CEO意識調査」です。
この調査では「今後12カ月間の貴社の売上成長見通しについてどの程度自信をお持ちですか」という質問があるのですが、それに対して自信がある(「非常に自信がある」および「極めて強い自信がある」)と回答したCEOの割合は、世界全体で56%、アメリカで67%、中国で45%であったのに対して、日本では25%と非常に低い数字になっています([図表4])。
経営者には、いかなる環境にあっても勝ち抜く経営判断が求められます。程度に差はあるものの、コロナ禍から経済が回復しつつあるという似たような経済環境のなかで、将来の売り上げ成長見通しに自信がある経営者が世界と比べて日本で少ないことは、日本の企業経営者の経営判断や経営戦略に問題があることを表していると考えられます。
日本経済は1990年代半ばに、現在では「失われた20年あるいは30年」と呼ばれる長期停滞に入りました。日本が敗戦という大きな構造変化に直面した1945年から約50年を経た後のことです。
これは、ちょうど、戦後日本の成長を牽引した松下幸之助や本田宗一郎のような起業家精神に溢あふれる第一世代のリーダーたちが去った後のタイミングです。
バブル崩壊後のバランスシート不況を乗り切るために、企業活動を縮小し、借金返済に注力せざるをえなかった時代の経営者たちの守りの姿勢が今も続き、企業行動が積極的でなくなっていることは否めないでしょう。
宮本 弘曉
東京都立大学経済経営学部
教授