「内部留保」が経済成長に悪影響を及ぼすワケ
[図表3]は企業の内部留保(金融・保険業を除く)の推移を示したものです。
内部留保は2000年代に入ってから増え続けていることがわかります。2021年度には約516兆円と初めて500兆円を超え、2000年度の内部留保(約194兆円)の約2.7倍となっています。2021年度の名目GDPは542兆円なので、内部留保額はGDPの約95%に匹敵する大きさです。
このように企業がお金を社内にため込むというのは、実は異様な姿です。というのも、本来、企業は貯蓄よりも投資が多くなる投資超過主体だからです。
企業は、金融機関から借り入れたり、株式や債券を発行したりして資金を調達し、それを元手として事業を行い、収益をあげることを目的としています。
将来の糧を生み出すために、リスクをとって新しいことにチャレンジし、積極的に投資をするはずの企業がお金をため込んでしまっているということは、企業行動が保身的になっている証拠です。
なぜ、企業はお金をため込むようになったのでしょうか?
企業が内部留保を積み上げるようになったのは、バブル経済崩壊後のバランスシート不況のなかで、借金返済を最優先として、企業活動を縮小せざるをえなかったことがきっかけだと考えられています。
その後も、企業は、100年に一度の大不況と言われたリーマン・ショックを契機とする世界金融危機を経験します。大きな経済ショックを経験した企業は、いざというときに備えて、借り入れの依存度を下げ、財政基盤を強化するようになったのです。
また、高齢化を伴う人口減少を背景として、将来にかけて低成長が持続する懸念があるなかで、設備投資や人件費などの増加を抑え、有事に備えて、自己資本の積み増しを優先するという行動をとるようになったとも考えられます。
このように、日本企業が保守的で消極的な行動をとるようになった大きな要因に、経営者のあり方や質があると考えられます。
企業経営者の本来の役割は、リスクをとって新しいことにチャレンジし、企業を成長させ、収益を上げ、従業員に賃金を支払い、株主に収益を還元することです。
しかしながら、経済環境が厳しいなかで、特に大企業で、経営者が保身化しているように見受けられます。
積極的な経営を行い、果敢に投資を進めた際に、失敗して責任問題になることを恐れ、むしろ、経費削減やリストラなどで数字を安定させ、評価を得ようとするようになっていると言えます。
もちろん、経費節減やリストラなどにより経営を改善し、再生した企業もありますが、そうでない消極的な経営を行う企業が多くなれば、経済全体で投資は低迷、経済成長にはよくない影響を及ぼします。
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