「デジタル化の遅れ」が経済停滞を招いている
労働生産性低迷の原因のひとつに「物的資本の停滞」があります。
経済理論は、労働投入1人当たりの資本ストックが多くなると、労働生産性が高くなることを示しています。データを確認しましょう。
[図表1]は資本装備率の推移を示したものです。
資本装備率は、資本ストックを従業者数で割ったもので、従業員1人当たりの設備等の保有状況を示したものです。一般に、この指標が高いと、生産現場において機械化が進んでいるとされます。
日本の全産業の資本装備率は、2000年代初頭までは大きく上昇していましたが、その後は伸びておらず、これが労働生産性を停滞させたと考えられます。
産業別に資本装備率の推移をみると、製造業では2000年代以降も伸びている一方で、サービス業では停滞していることがわかります。サービス業は、全産業に占める割合が大きいため、サービス業での資本装備率の低迷が経済全体の資本装備率の低迷につながっています。
製造業とサービス業で資本装備率が異なるのは、サービス業では労働を資本で代替するのが難しいことを反映しています。
労働を資本で代替することの難易を示す尺度である「代替の弾力性」をみると、かつては製造業に比べてサービス業では代替の弾力性は低く、労働を資本で代替するのは容易ではありませんでしたが、2010年代には製造業とサービス業で代替の弾力性はほぼ等しくなっているとの報告もあります。
この背景には情報通信技術(ICT)の発達があります。これまでサービス業で人間が行っていた仕事が、最近では機械に代替されるようになってきました。たとえば、スーパーマーケットやコンビニなどでは、セルフレジを導入する店舗が増えています。
また、事務作業を担うホワイトカラーがパソコン等で行っている一連の作業を自動化できるソフトウェア「ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)」を導入する企業が増加するなど、ソフトウェアを利用した省力化投資も活発に行われています。
とはいえ、他の先進諸外国に比べると、日本のICT導入は大きく遅れています。総務省の調査研究([図表2])によると、日本企業のICT導入率はアメリカ、イギリス、ドイツの企業よりも低く、労働生産性を抑制しています。
また、ICTを導入しても、ICTの利活用に向けた環境整備を実施している企業の割合が低いという現実があります。
日本のIT(情報技術)化、デジタル化の遅れは他のデータからも明白です。
スイスのビジネススクールIMDが毎年公表する「世界デジタル競争力ランキング」によると、2021年の日本のデジタル競争力の総合順位は64か国中28位となっています。そのうち、デジタル・技術スキルの領域では62位となっています。
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