急速に進む円安…その理由とは
日本銀行が金融緩和を続けるなか、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は利上げを行っているので、日米金利差が拡大し、急速な円安進行をもたらしています。
[図表1]にみられるように、10年物国債利回りでみた日米の金利格差は、FRBが利上げを開始する前の2021年3月初めに1.5%程度だったものが、2022年6月には3%程度に拡大しています。
それに伴い、外国為替市場では円安・ドル高が進み、2022年3月初めに1ドル=115円ぐらいだったのが、9月には一時145円台をつけ、30円程度、円安が進みました。政府・日本銀行は急速な円安進行を受けて、9月22日に、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切りました。
なぜ日米の金利差の拡大が、為替レートに影響を与えるのでしょうか? この問いに答える前に、為替レートについて少しだけ解説しましょう。
為替レートとは、円とドル、円とユーロなど2つの通貨の間の交換比率です。通貨を交換するときの「価格」ですから、基本的に為替レートは通貨の需要と供給で決まります。
そして、経済の変化や人々の思惑、あるいは中央銀行の政策など様々なものが、通貨の需給を通じて、為替レートを左右します。
「円高・円安」と言われますが、円高とは文字通り日本円の価値が高くなったことを、逆に、円安とは日本円の価値が安くなったことを表しています。
たとえば、為替レートが1ドル=100円ならば、1ドルを買うのに100円が必要ですが、それが1ドル=200円になれば、1ドルを手に入れるのに200円必要ということになります。あるいは、100円で0.5ドルしか買えないということになります。
1ドル=100円のときよりも、100円で買えるドルが少なくなったということは、それだけ円の価値が安くなったということです。つまり、為替レートが1ドル=100円から1ドル=200円になるのは円安ということになります。
さて、先ほどの問いに戻りましょう。なぜ、日本よりアメリカの金利が高くなると、円安・ドル高になるのでしょうか?
これは、定期預金を考えるのがわかりやすいと思います。
今、皆さんが日本の銀行か、アメリカの銀行のどちらかに預金をするとしましょう。日本の銀行では定期預金の金利が0%、アメリカの銀行では定期預金の金利が3%だとします。アメリカの銀行の金利のほうが高いので、そちらにお金を預けたほうが得だと考えられます。
ここで、皆さんが保有しているのが日本円だとすると、そのままアメリカの銀行に預金することはできません。まず、手持ちの円をドルに換える必要があります。つまり、円を売ってドルを買うことになります。その結果、為替レートは円安・ドル高に傾きます。
なお、現在、円安ドル高が進んでいるのは、日米の金利格差が拡大したことだけがその原因ではありません。
世界でエネルギーや原材料の価格が高騰していることもその原因です。輸入のため、ドルの手当てを増やさざるをえなくなっており、円売りが広がっています。