「日米金利差」だけじゃなかった!…「1ドル115円→145円」の急激な円安が進んだワケと、その後も日本経済が痛めつけられ続けるワケ【元IMFエコノミストが解説】

「日米金利差」だけじゃなかった!…「1ドル115円→145円」の急激な円安が進んだワケと、その後も日本経済が痛めつけられ続けるワケ【元IMFエコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本においては、物価高にも関わらず賃金がほとんど上がりません。この状況が作り出された原因とは一体何なのでしょうか。本連載では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏が、著書『51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因』(PHP研究所)から日本経済の問題点について解説します。

急速に進む円安…その理由とは

日本銀行が金融緩和を続けるなか、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は利上げを行っているので、日米金利差が拡大し、急速な円安進行をもたらしています。

 

[図表1]にみられるように、10年物国債利回りでみた日米の金利格差は、FRBが利上げを開始する前の2021年3月初めに1.5%程度だったものが、2022年6月には3%程度に拡大しています。

 

[図表1]日米金利格差とドル円相場

 

それに伴い、外国為替市場では円安・ドル高が進み、2022年3月初めに1ドル=115円ぐらいだったのが、9月には一時145円台をつけ、30円程度、円安が進みました。政府・日本銀行は急速な円安進行を受けて、9月22日に、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切りました。

 

なぜ日米の金利差の拡大が、為替レートに影響を与えるのでしょうか? この問いに答える前に、為替レートについて少しだけ解説しましょう。

 

為替レートとは、円とドル、円とユーロなど2つの通貨の間の交換比率です。通貨を交換するときの「価格」ですから、基本的に為替レートは通貨の需要と供給で決まります。

 

そして、経済の変化や人々の思惑、あるいは中央銀行の政策など様々なものが、通貨の需給を通じて、為替レートを左右します。

 

「円高・円安」と言われますが、円高とは文字通り日本円の価値が高くなったことを、逆に、円安とは日本円の価値が安くなったことを表しています。

 

たとえば、為替レートが1ドル=100円ならば、1ドルを買うのに100円が必要ですが、それが1ドル=200円になれば、1ドルを手に入れるのに200円必要ということになります。あるいは、100円で0.5ドルしか買えないということになります。

 

1ドル=100円のときよりも、100円で買えるドルが少なくなったということは、それだけ円の価値が安くなったということです。つまり、為替レートが1ドル=100円から1ドル=200円になるのは円安ということになります。

 

さて、先ほどの問いに戻りましょう。なぜ、日本よりアメリカの金利が高くなると、円安・ドル高になるのでしょうか?

 

これは、定期預金を考えるのがわかりやすいと思います。

 

今、皆さんが日本の銀行か、アメリカの銀行のどちらかに預金をするとしましょう。日本の銀行では定期預金の金利が0%、アメリカの銀行では定期預金の金利が3%だとします。アメリカの銀行の金利のほうが高いので、そちらにお金を預けたほうが得だと考えられます。

 

ここで、皆さんが保有しているのが日本円だとすると、そのままアメリカの銀行に預金することはできません。まず、手持ちの円をドルに換える必要があります。つまり、円を売ってドルを買うことになります。その結果、為替レートは円安・ドル高に傾きます。

 

なお、現在、円安ドル高が進んでいるのは、日米の金利格差が拡大したことだけがその原因ではありません。

 

世界でエネルギーや原材料の価格が高騰していることもその原因です。輸入のため、ドルの手当てを増やさざるをえなくなっており、円売りが広がっています。

次ページ円安は良いのか、悪いのか
51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因

51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因

宮本 弘曉

PHP研究所

●この30年で平均所得は100万円下落……なぜ日本の賃金は上がらない? ●理由は、国民が平等に貧しくなる「未熟な資本主義」にあった! ●元IMFエコノミストがデータで示す「歪んだ経済構造とその処方箋」! 物価の高騰、…

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