コストがかかっても「DX専門チーム」を作るべき理由
経営事情を考えると、兼務とした判断は仕方がない部分もある。資金がある大手企業なら優秀な人材が集まりやすく、専任の担当者をつけられるかもしれないが、中小・中堅企業はコストを考えるとその選択はしづらく、人も十分にいるわけではないのでどうしても兼任という選択に落ちつく。
一見、この判断は正しいように思える。しかし、そこに落とし穴がある。僕は気づかないうちに落とし穴にはまっていた。
ならば、当初のメンバー2人を専任にできるかというと非常に難しい。1人はマーケティング部門に必要な人材で、彼を引き抜くわけにはいかない。もう1人の総務の情報システム担当はDXと関係のないところでの業務がたくさんある。
ほかの部門の状況も同じだ。どの部門でも社員はそれぞれ役割をもって仕事に取り組んでいる。DXプロジェクトの専任として引き抜ける人はいない。必要最小限の人数で仕事を進めている中小・中堅企業では簡単に専任担当者をつくることができないのだ。
本気でDXに取り組むのであれば、会社もそのためにリソースを注入しなければならない。DXプロジェクトのリーダーに適した人をメンバーにして、専任で関わってもらう必要がある。
これは考えてみれば当たり前のことだ。商品開発部も営業部も工場もマーケティング部も、事業に大きく影響する部門では優秀な人が専任で指揮をする。僕たちにとってのDXは、そのような主要部門と匹敵するくらいの重要性をもっている。
それならば、経営面ではリスクはあるものの、そこに専任の担当者を配置するのは経営判断として正解といえる。社内業務のデジタル化もDXも、他社をリードして推進していくためには専門知識をもつメンバーが中心となって取り組んでいく必要がある。
そこで僕は、プロジェクトメンバーを外部から調達しようと決めた。社内に専任になれる人がいないなら外部の協力者を獲得するしかない。専任のプロジェクトメンバーを新たに採用して、DXチームをつくろうと決めたのだ。
実は、専門家を頼る重要性は僕自身が過去に実感したことでもあった。僕は2004年に会社をつくり、2015年にJASDAQに上場した。大変だったのは上場の手続きだ。資本政策も含め分からないことが多過ぎた。
もし上場経験がある経営者やその分野に詳しいアドバイザーが近くにいたら、もう数年早く上場できたと思っている。これは創業経営者によくある話で、経営者の仲間とも、「IPOするなら経験者が近くにいたほうがよい」ということを過去に何度か話し合ったことがあった。
DXも同じだ。最速、最短距離で進めていくためには、高度な知識と経験をもつ人を味方につけることが成功の鍵の一つなのだ。
中西 聖
プロパティエージェント株式会社
代表
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