米国は「格差社会」から「みんな貧困」時代に突入しつつある
米小売売上高は前月比3.0%増。景気後退への懸念が緩和
15日に発表された米国の小売売上高(1月)は、前月比3.0%増加と2021年3月以来、約2年ぶりの高水準を記録した。ガソリンと自動車を除いたベースでは同2.6%増だった。昨年12月は同1.1%減と年末商戦にもかかわらず、先行きを懸念させる数値だったが、年初に持ち直したことを示唆している。
今年の米国の経済見通しについては厳しい見方が多かったが、少なくとも1月の出だしは堅調だったと言える。金利上昇により借り入れコストが上昇し、物価も高い水準で上がっているにもかかわらず、歴史的な低水準にある失業率が示すように雇用市場は引き締まり、賃金も伸びていることに支えられて、消費支出が継続しているようにうかがえる。
これまでは堅調な経済指標が発表されるたびにインフレ高進懸念が強まっていたが、米国のGDPの約7割近くを占める個人消費の堅調な需要が再確認されたことは景気後退のやわらぎ、強いては株式市場にとってはポジティブに働いたものとみられる。
利上げの効果には時間が
一方、今回の結果は根強いインフレと闘う米金融当局にとっては利上げを正当化する材料に成り得ると言えるだろう。
利上げの効果は時間差を伴って発揮される。住居やITセクターなどは、金利に敏感で、売上や企業収益に相対的に早く影響が出る。しかし、こうした影響が米国経済全体には広がっていないという現実を、今週発表された1月の米消費者物価指数CPIと小売売上高は示した。
ディスインフレのプロセスが失速し、景気軟化の兆候が限られるなか、今回の力強いデータは米金融当局が金利を高水準でより長期にわたって維持する必要があることをサポートする。
政策金利のピーク水準高騰リスクは高まりつつあるという指摘は、あながち単なる警告ではないだろう。
そして、失業率は3.4%と半世紀ぶりの低水準を記録している。FRB当局は、雇用市場が堅調である限り、インフレ圧力として警戒する姿勢を緩めないであろう。
先日発表された1月の米消費者物価指数(CPI)では高水準での物価の高止まりが改めて示されている。
「物価高」でありながらも雇用は安定しているため、政府は利上げ姿勢をゆるめず、結果「収入増が見込めない」という、「次世代型貧困」がアメリカ国民を追い詰めていた。そんなか、「小売売上高アップ」という材料が加わったことで、米国は「格差社会」から「おおむねみんな貧困」時代に突入しつつある。