習近平氏、異例の3期目続投に「よからぬことが起こりそうな」予感。中国「国防費1兆6,000億元」をつぎ込む、軍事拡張へ

習近平氏、異例の3期目続投に「よからぬことが起こりそうな」予感。中国「国防費1兆6,000億元」をつぎ込む、軍事拡張へ
(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

2022年の成長率3.0%は、1976年以来の最低水準

2023年3月6日 1ドル=135.92

 

中国では5日から、全国人民代表大会(全人代)が開幕した。13日まで行われる。冒頭に、李克強首相が政府経済報告を慣例通り行い、そのなかで、2023年の国内総生産(GDP)成長率目標を5.00%前後に設定すると発表した。

 

財政赤字については、対GDP比3%とすることも明言した。2022年は、経済成長率目標を5.5%前後と設定したにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や不動産開発業者の流動性危機が足かせとなり、実際の成長率は3.0%成長にとどまった。

 

年間成長率3.0%は、1976年以来の最低水準であり、政府目標を大幅に下回ったことには危機意識も強い。中国経済を成長軌道に戻し、信頼回復と金融システミックリスクを回避するためにも、成長軌道への回帰に向けた取り組みは重要と考えられている。


活動報告を行った李克強首相は、今月で2期10年の任期満了により退任する予定である。2023年は、内需拡大を重視し、積極的な財政政策を行うことを明言した。2023年は、雇用については、都市部で約1,200万人の雇用創出を目指す。

 

消費者物価指数(CPI)の上昇率目標は約3%に設定した。地方政府が発行する特別債の枠は3.8兆億元(約75兆円)をめどに認めるという。なお、国防費は7.2%増え1.55兆元で、2019年以来の大きな伸び率となる。

 

会期中には10日に国家正副主席、11日に首相、12日には副首相、閣僚を選出する予定である。近く発足する新政府は李克強首相が表明した消費刺激策などを引き継ぎ、景気支援を全面的にサポートするとみられる。

 

今回の経済成長目標が事前の予想よりも低めに設定されたことは「ゼロコロナ」政策で傷んだ経済の回復は容易ではないことを示唆するものとも捉えられる。

 

3月のPMIは製造業・非製造業がそろって大幅な改善がみられたことは中国経済の期待の表れでもあるが、先行きが見通せないなか、達成可能な現実的目標にとどめた形ともみられる。

 

一方、23年の国防予算案は前年比7.2%増加の1兆5,537億元と成長目標を上回り、2019年以来の大きな伸び率となり軍事拡張路線が鮮明となった。異例の3期目の任期が正式に始まる習氏の権力基盤はさらに強固になるとみられ、今後の中国経済の行く末を見るなかで会期中での決定事項に注目が集まるだろう。

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