「仕事はあってもお金はない」…アメリカ国民が悲鳴を上げる「次世代貧困」の正体。失業率の低さがもたらす、深刻な事情 (画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

物価の高止まりで、米国利上げは年内維持される見通し

市場が注目していた米国の消費者物価指数(1月)が14日発表された。物価の高止まりが改めて示されたことから、米FRBが年内に利下げ姿勢に転換することへの期待は急速に萎み、米国債券相場では利回りが全般に上昇し、株価への圧迫要因となった。

 

米労働省が発表したCPIは前年同月比での伸びが6.4%増と昨年12月(6.5%)からは小幅低下し、21年10月以降では最も小幅な伸びとなったが、前月比では0.5%上昇と12月の前月比と事前予想のいずれも上回った。

 

変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数でも前年同月比5.7%、前月比では0.4%と高止まりを示唆する内容となり、依然として物価は高い水準で上昇していることが示された。

 

特に住居費など一部の項目では価格上昇圧力が目立ってきており、インフレが高止まりしている状況が浮き彫りとなった。2月FOMC以降も、米FRB高官の発言に耳を傾けてこなかった債券市場だが、聞く耳を持たざるをえない。

 

そして、失業率は3.4%と半世紀ぶりの低水準を記録している。FRB当局は、雇用市場が堅調である限り、インフレ圧力として警戒する姿勢を緩めないであろう。

 

このように、「物価高」でありながらも雇用は安定しているため、政府は利上げ姿勢をゆるめず、結果「収入増が見込めない」という、「次世代貧困」の深刻さが顕著となった。

 

債券市場では政策金利に敏感な米国2年債利回りが4.6%台を付け、昨年11月以来16年ぶりの高値である4.74%に迫る勢いで上昇した。一方で、長期債利回りは上昇の幅が限定されたため10年米国債利回りと2年米国債利回りの逆イールド幅は▲0.87%へと再び拡大し、1980年以来で最大を記録した。

 

FF金利誘導目標は年後半での相場観は大きく変化した。また、最終的なターミナルレートの引き上げも辞さない構えである。市場ではFRB当局が3月と5月に0.25%の引き上げを実施、さらにはピークとして織り込まれていた水準を超える利上げを6月にも実施する可能性すら高まっている。

 

マーケットは今回の想定外の強さを示したCPIのデータからも、インフレとの戦いは長期戦を想定しなけらればならず、楽観的すぎる金利低下シナリオは崩れたと考えられる。

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    Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者 国際金融ストラテジスト <在香港>

    京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
    2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
    世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。

    ● 個人公式サイト
     「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)

    著者紹介

    連載国際金融ストラテジスト長谷川建一の「香港・中国市場Daily」

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