
香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。
米国の失業率は「歴史的な低水準」だが…
16日、複数の米金融当局の高官は、前回の1月に開催したFOMCで実施した以上に利上げの幅を広げることを示唆し、追加利上げが必要であることを強調した。
主張を発表したクリーブランド地区連銀のメスター総裁とセントルイス地区連銀のブラード総裁は、今年のFOMCで双方投票権を有していないが現状のインフレ抑制のため、足元の経済の強さを踏まえれば、更なる利上げを正当化する十分な根拠があったという認識を示した。
今週発表されたインフレ動向を示す1月の米消費者物価総指数と生産者物価指数は共に市場予想を上回りインフレ高進懸念は強まっていたが、今回の結果は根強いインフレと闘う米金融当局にとっては悩ましい結果となったことは事実である。
一方、1月の米小売売上高から見て取れるように米国経済はこれまでの想定よりも速いペースで成長しており、失業率は歴史的な低水準にある。昨年から大幅な利上げを行うなかで堅調な成長が続く米国経済にとっては、年内にディスインフレを固定するためにも利上げを継続することは米金融当局にとって不可欠なことである。
リセッションリスク(景気後退)を招く恐れがありながら、段階的に利上げを実施してきた当局にとっては最終的な政策金利のターミナルレートは「5.25-5.5%」と現状から75ベーシスポイントの引き上げ余地も考えられる。
足元で利上げの効果は米国経済全体には広がっていないという現実を受け止めなければならないマーケットにとって、政策金利のピーク水準が高くなるリスクが強まりつつあるという指摘は、あながち単なる警告と受け止めるだけでは足りないだろう。