米FRBは2月の発言を覆し強気な利上げの可能性を表明
3月7日米国上院・銀行委員会で行われたパウエルFRB議長の議会証言では、インフレへの警戒感が強いこと、インフレを抑制するため金融政策でのタカ派姿勢が明確になったことで、米ドル金利が上昇し、今年の最高水準を更新した。
パウエル議長は、最近の経済データが予想より強いことを認め、①FRBが政策金利を従来の想定より高い水準に引き上げる公算が大きいこと、②必要があれば利上げペースを加速させる用意があること、③高い水準に金利を維持する期間が長くなることを明言した。
①については、2回程度としていた利上げの回数を上回ることにも触れていたし、②については経済状況が必要とするならとの前提を置きながらではあるが、25bpsではなく50bpsの利上げも匂わせた。③については、インフレ圧力はここ数ヵ月は減速してきたものの、目標である2%水準に戻すためには、道のりは長くなる公算が大きいと指摘した。
議長の発言により金融市場は、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で50bps幅の利上げが実施されることを警戒し始めた。2月1日の前回FOMC直後の会見では、ディスインフレの初期段階とコメントし、金利を引き上げた効果が現れ、インフレ抑制につながりつつあるとの認識を示していたが、今回はわずか1ヵ月で、異なったメッセージを送ったことになる。そのため、この発言が市場にとってインパクトのあるサプライズとなった。
今週発表される雇用統計をはじめ、物価指標などでも堅調な状況が確認された場合、これまでの利上げでは、米国経済にブレーキをかけるには効果が足りなかったとの評価となり、FOMCがインフレ抑制のために思い切った利上げに踏み切るということは有り得るだろう。
政策金利に敏感な米国2年債利回りは1時5.01%と2007年以来の高水準となったー方、長期債利回りは上昇の幅が限定されたため10年米国債利回りと2年米国債利回りの逆イールド幅は1.0%を上回り、1980年以来で最大幅を記録した。
当時はボルカーFRB議長がリセッションの長期化も辞さず、2桁台に上昇したインフレと闘って、短期金利を急激に引き上げたタカ派の金融政策を実施した。経済統計を注視しながら、現状を分析し、インフレ高進に歯止めをかける政策を最優先することを表明しているFRBとしては、その姿勢は一貫しているということだろう。
金融市場はディスインフレが始まったとのパウエル議長の言及に飛びつき、金利が上昇することへの警戒感を怠っていたツケが出ているともい言える。金利上昇には限りがあるとのシナリオに乗っかったまま、米FRBのシナリオとの乖離が埋まっていなかったが、そのギャップを埋める形で2月の金利上昇が起こったのである。
足元の米経済指標の堅調な動きは、本来、株式市場にとって悪い材料ではないが、2月の雇用統計を控え金利上昇懸念がくすぶるなか、株式市場は厳しい環境が続くだろう。