「銀行は雨の日に傘を貸さない」は本当か
銀行との付き合い方について詳しく説明します。
昔から「銀行は雨の日に傘を貸さない」とよく言われます。高視聴率を取った金融ドラマ『半沢直樹』にも「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」というセリフがありました。
会社が儲かっているときはどんどん融資してくれるのに、経営が苦しくなってお金が必要なときに資金回収をしようとするという意味です。銀行の非情さに対する経営者の恨みつらみが伝わってくるようですが、これは経営者側の論理であって銀行側は違う見方をしています。
そもそも銀行というのは金利で利益を得るために融資をしています。1,000万円を貸し出す際に何%かの金利を上乗せし、それを回収することで金利分だけ利益を得ることができる仕組みです。ですから本当は多くの会社に融資をしたいのです。
しかし、融資にはリスクが伴います。貸した資金を返してもらえなければ利益が出ないどころか損失を出してしまいます。今は金利1%以下の超低金利時代ですから、銀行は1,000万円を貸しても少ないと10万円しか利益が出ません。その10万円のために返ってこないかもしれないリスクを負っているのです。
リスクを最小にするためにも確実に返済してくれそうな会社を選ばなければなりません。この会社は経営が危ないとなれば、銀行に損失が出ないように対策する必要があるのです。そのように考えれば、業績悪化している会社から少しでも残りのお金を回収しようと必死になるのも仕方がないと分かってもらえるはずです。
銀行側としても業績が傾き始めた初期の段階で相談してもらえていれば、業績改善のための助言や返済計画の見直しなど打つ手もあるのです。販路開拓に困っているのであれば銀行の取引先企業のなかからマッチングして紹介するケースもあります。
しかし、日頃から銀行との関係づくりをしてこなかった会社に限って自分でなんとかしようと頑張ってしまい、業績悪化を銀行に隠して資金繰りに奔走してしまいます。そして末期的な経営状況になるまで打ち明けてくれません。
いざお手上げ状態になってから報告を受けても銀行としては助けることができず、心を鬼にして回収するしかなくなってしまうのです。
経営者にしてみれば、今まで良い関係で来たのにいちばん困っているときに見放すのかと思う気持ちは分かります。しかし、視点を変えて銀行側から見ると社長を信じて貸したのに、大事なときに相談さえしてもらえなかったと思ってしまいます。銀行側も社長に裏切られたと思っているのです。
銀行は困ったときに資金を引き出せる便利な財布ではありません。銀行には銀行の論理があるということ、そして自衛のために撤退せざるを得ない場合があるのです。この視点が経営者にもあれば銀行との関係づくりも変わってくるに違いありません。
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