(※写真はイメージです/PIXTA)

自動車産業において、世界では脱炭素化にEV化を中心に取り組みが広がっています。脱炭素化・EV化においては出遅れた形となっている国内メーカーですが、日本ならではの強みを活かす方法があるといいます。みていきましょう。

 

BMW、完全にリサイクル可能な車を開発

欧州の自動車メーカーにおいても、各社必死に気候変動対策を進めている。その中でもBMWのサステイナブルを実現するサキューラーの取り組みを紹介したい。BMWは21年9月の国際モーターショー「IAA Mobility」で100%リサイクル可能な未来のコンパクトカー「i Vision Circular」を発表した。

 

画像/ BMWホームページ
[画像]RE:BMW Circular Lab 画像/ BMWホームページ

 

このコンセプトカーは、BMWが定義したサーキュラーエコノミー(循環型経済)の4原則、「RE:THINK」「RE:DUCE」「RE:USE」「RE:CYCLE」に従ってデザインされている。

 

車体にはリサイクルされたアルミを使い、塗料を使用せず、ライトゴールドのアルマイト仕上げが施されている。タイヤは認定された持続可能な方法で栽培された天然ゴム製であり、内装には接着剤を使わない新しい接合技術を導入する。コードやボタン、ファスナーなどで接続されており、簡単に分解が可能なデザインとなっている。現状ではエアバッグの要件などから実現が難しいが、2040年までには完全な循環型の車体を実現可能と見込んでいるという。

 

BMWの取り組みの中で特徴的なのは、透明性のあるコミュニケーションを続けるためのプラットフォームでの活動を重視している点であろう。BMWは、21年に「RE:BMW Circular Lab」というプラットフォームを構築した。

 

これをサーキュラー・サステナブルな社会実現のためのコミュニケーション・コラボレーションプラットフォームとして位置付け、エキスパートとの対話やネットワークの構築から、ワークショップの実施、会社の立ち上げまで幅広く取り組み、BMWグループとしての活動を透明性高く共有する場としている。

 

例えば、BMWは車のデザインからサーキュラーを実現すべく、“Circular Design”を研究しており、その研究内容を大人も含む12歳以上のメンバーに共有するためにエコ素材を使ったワークショップを開催している。当然のことながら12歳の子供がすぐさま顧客になるわけではないが、BMWのサーキュラーエコノミーに対する取り組みをいち早く共有し、長年にわたって顧客を育成する考えである。

 

自動車メーカーによる、温室効果ガス排出削減への取り組みは、製造工程への再エネ導入、リサイクル可能なマテリアルの採用、サーキュラーデザイン、EVの製造、バッテリーリサイクルなどであり、各社似通ってくることが想定される。

 

その中で顧客体験において重要になるのは、環境への貢献度を実感として顧客自身が持てるか、自らが選択するブランドによる環境貢献を確信できるかである。企業が顧客から信頼されるブランドを構築するには、いち早く自らのコンセプトを明確にし、首尾一貫した行動と長年にわたるコミュニケーションで信頼を醸成する必要がある。BMWの取り組みは、まさに顧客との信頼関係を醸成する取り組みなのである。

 

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※本連載は、木村将之氏、森俊彦氏、下田裕和氏の共著『モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質

モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質

木村 将之、森 俊彦、下田 裕和

日経BP

2030年の自動車産業を占う新キーワード「モビリティX」――。 「100年に1度」といわれる大変革期にある自動車産業は、単なるデジタル化や脱炭素化を目指した「トランスフォーメーション(DX、SX)」ではもう勝てない。今後…

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