多額の学費ローンを抱えながら「Zip2」を起業したのが1995年のこと。イーロン・マスクはわずか7年で223億円の大金持ちになる。経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥氏が著書『イーロン・マスク流 「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』(プレジデント社)で解説します。

「アイデアを考える」VS「アイデアを形にする」

何かをやろうとした時、多くの人にとって「誰もつくっていない」「誰もやっていない」は簡単に諦める理由になる。

 

しかし、成功する起業家の多くはそう考えない。

 

アップルの創業者スティーブ・ジョブズの口癖は「居場所がないなら自分でつくる」だし、「誰も助けてくれないなら自分たちでやるまでだ」だった。

 

自分の求めることを誰もできないなら、自分でやればいい。自分がほしいものを誰もつくれないなら、自分でつくればいい。

 

これがマスクの考え方の大きな特徴であり、仕事における大切な指針である。

 

マスクによると、「アイデアを考える」ことと、「アイデアを形にする」ことの間には、とてつもなく大きな開きがある。

 

特に今の時代、コンピュータが発達しているだけに、「パワーポイント上ならなんでも目的通りに動かすことができる」ものの、それを実際に「動くもの」にするには大変な労力が必要になる。電気自動車を例に、こんなことを言っている。

 

「EV(電気自動車)のアイデア自体はかなり古くからあったのに、なぜ誰もつくらなかったのか。それはアイデアを実行することが、思いつくより難しいからだ」

 

こうして、マスクは2004年、電気自動車会社の「テスラモーターズ」(現・テスラ)に投資をする。

 

電気自動車の時代を本気で切り開こうとした最初の挑戦者は、発明王トーマス・エジソンだった。しかし、盟友ヘンリー・フォードが広めたガソリン自動車に押されて、その夢は一旦潰えてしまった。それから100年余り。電気自動車に新しい風を吹き込んだのがイーロン・マスクだ。

 

マスクのビジョンは「人間の移動手段を化石燃料から解き放ち、太陽光発電などに基づいた持続可能なものにする」だが、そのためには電気自動車を誰もが乗りたくなるようなものにして普及させる必要がある。

 

しかし、誰も電気自動車に本気で取り組もうとはしない。

 

誰もやらないのなら、自分でやるのがマスクである。

 

つまりマスクにとって、テスラに投資することと、すぐれた電気自動車をつくることはごく自然な流れだったのだ。

 

「アイデアを実行することは、思いつくより難しい」以上、世界を変えるのはいつだって、アイデアを「語る人」ではなく、「実行する人」なのだ。

 

マスクは学生の頃から「世界を救う」ことを夢見ていた。

 

何もしなければただの「語る人」で終わるところだが、マスクは「語る」以上に「実行する」。

 

「アイデアは実行しないと意味がない」と思っているのがマスクであり、実際に実践するのがマスクだ。

 

これがマスク流「すぐやる人」の仕事術のベースである。

 

桑原 晃弥
経済・経営ジャーナリスト

 

 

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※本連載は桑原晃弥氏の著書『イーロン・マスク流 「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

イーロン・マスク流 「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術

イーロン・マスク流 「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術

桑原 晃弥

プレジデント社

世界一の大富豪にして、ツイッター買収騒動を起こし、「日本消滅」をツイートした男、イーロン・マスク。2022年版『フォーブス』の長者番付で、マスクは「世界一」の座に輝いた。総資産は2190億ドル(約30兆円)と、2位のアマゾ…

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