失敗で終わるくらいなら切腹する
■絶対ギブアップするな!息をしている限り、生きている限り、前に進むんだ
マスクはこれまでの人生で、何度も崖っぷちを味わっている。
南アフリカからカナダへ渡ってきた時や、最初の起業時に極度の貧しさを経験している。スペースXやテスラでは有り金をはたいても資金が足りず、友人などから借金を重ねることでかろうじて危機を脱している。
マスクがここまでがんばることができるのは、根底に「強い覚悟」を持っているからだ。
創業したばかりのベンチャー企業が成長するにつれ、最初にぶつかるのが資金の問題だ。
すぐれたアイデアや技術を持っていて、それを世の中に広めようと会社を立ち上げるものの、規模が拡大するにつれて人を雇わなければならないし、それ以外にもたくさんのコストがかかるようになる。どうしても先立つものが必要になってくる。
Zip2を創業した時のマスクは本当に貧しく、兄弟や父親から出してもらった2万8000ドル(約380万円)は、オフィスの拡張やソフトのライセンス契約、機材調達などであっという間に使い果たしてしまった。オフィスに寝泊まりしては、近所のハンバーガーチェーンで食事を安くすませるという日々を送った。
それでもマスクは四六時中オフィスで過ごしながら、常にソフトの改善を続けた。
ごく普通のパソコンを大きなケースに収めて、車輪付きの台車に載せ、さも大型コンピュータであるかのように装った。そうすることで、会社を訪ねてきた投資家たちに「すごい」と思わせる効果を狙ったのだ。
しかし、それ以上に投資家たちを驚かせたのは、マスクの「異常ともいえる会社一筋」の姿だった。同僚の一人が当時のマスクをこう評している。
「まだニキビの残る大学生(実際には中退していた)だったイーロンが、いい悪いは別にして、既にああいう迫力を身につけていたんですから。結局は、自分の人生を会社づくりに賭けるという彼の姿勢が、ベンチャーキャピタルを動かしたんだと思います」
ある時、マスクはベンチャーキャピタルにこんな啖呵を切っている。
「私はサムライの心を持っています。失敗で終わるくらいなら切腹します」
マスクの熱い思いが通じたのか、会社を設立した翌年の1996年、ベンチャーキャピタルのモア・デビドウ・ベンチャーズがZip2に300万ドルの出資を決めている。おかげでマスクの会社は広いオフィスに移転して、優秀なエンジニアを採用することができた。
たった1人でも、熱い思いを発し続けている人の周りにはその思いに共鳴する人たちが集まるというが、マスクはお金のない厳しい状況にあっても情熱を持ち、熱い思いを発し続けることで最初の苦難を乗り越えることができた。
マスクのこうした「自分のすべてを賭ける」姿勢は、その後も逆境を乗り越える大きな力となっていく。
みんなが「もう無理だろう」と思っても、「諦めるという選択肢も不可能という選択肢も持ち合わせていない」のがマスクである。
スペースX社は今でこそ民間ロケットのトップランナーとして、世界の衛星打ち上げはスペースXを中心に回っているといわれるほど高い信頼性を得ている。
しかし、そこに至るまでは、既に触れたように、打ち上げ成功まで3度の失敗をして、次も失敗したら資金が尽きるというところまで追い込まれている。
そんな折、気落ちする幹部や社員を前に、マスクはこう言った。
「私はこれまでもこれからも決してギブアップしない。息をしている限り、生きている限り、事業を続ける」
これほどの執念を見せられては、社員も成功に向けて全力でがんばる他はない。
最初のロケットの打ち上げに成功したマスクは、次に、ロケットを再利用するための垂直離着陸可能なロケットの開発に着手する。コストの大幅削減につながるアイデアだが、ロケットの制御の難しさから誰も挑戦しなかったほどの難題だ。当然、マスクも最初の挑戦では失敗するが、ここでもこう言って社員を励ましている。
「問題があったのは事実だが、原因をきちんと究明すれば乗り越えられる。私たちは技術の会社だ。立ち止まる必要はない。前に進もう」
結果、スペースXは2度の失敗を経て、2015年12月、「ファルコン9(改良型)」の軌道突入後の垂直着陸に見事に成功した。
マスクは常に最終目標を達成するまで決して諦めないし、そのためには自分のすべてを賭けて挑むという姿勢で目の前の困難に立ち向かっている。
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