失敗を恐れることなく挑戦できる理由
■失敗を失敗で終わらせるな!原因を取り除いて失望を「希望」と「集中」に変えるんだ
イノベーションや挑戦には失敗がつきものだ。
ところが、部下が新たな挑戦をして失敗した時、こんなことを言う人がいる。
「だから、やめろと言ったんだ。二度と余計なことをするんじゃないぞ」
「今までのやり方を変えるからこんなことになるんだ。さっさともとに戻せ」
これでは、新しいものに挑戦する意欲や、何かを大きく変えていこうという考えは企業から消え失せることになる。
この対極にいるのがマスクである。マスクがこれまでに挑んだのは、
①2000年当時の銀行業界の常識を覆すインターネットバンキングの設立
②ガソリン自動車が当たり前の自動車業界に電気自動車で挑戦
③国家レベルの事業であるロケットを開発して、人類を火星に運ぶ
といった、あまりに無謀なものばかりだ。
圧倒的な技術力や人材、莫大な資金が必要になるだけでなく、たくさんの規制との戦いもあるだけに、失敗の可能性が高いものばかりだった。
にもかかわらず、マスクがあえて挑戦を決めたのには2つの理由がある。
①難しいからこそやりがいがある
②世界を救い、人類を救うためには、やらなければならないという強い使命感
そして、もう一つ忘れてはならないのが、③失敗しても、問題を一つずつ解決していけば確実に前に進むことができる、という考え方だ。この考え方ができるからこそ、マスクは難しいプロジェクトにも失敗を恐れることなく挑戦できるのだ。
マスクのこの考え方がよく表れているのが、スペースXが挑んだ4度の打ち上げへの挑戦のエピソードである。
マスクがスペースXを設立したのは、2002年のことだ。
設立時点ではマスクは、ほんの1~2年でロケットを打ち上げることができると公言していた。設立から15ヶ月ほどで最初のロケットを打ち上げ、火星旅行も10年もあれば実現できる、という計画だった。
恐るべき楽観主義だが、マスクによると「理詰めで計算した結果」であり、みんながマスク並みに遮二無二働けば実現できる、と考えたのかもしれない。
しかし、そんな簡単なものではなかった。
結局、スペースXが初めてロケットの打ち上げに挑戦したのは創業から4年後の2006年3月のことであり、第1号の「ファルコン1」はわずか25秒で制御不能となり落下してしまった。
この時、マスクは社員を叱咤するのではなく、「これまでもロケットは、打ち上げる企業や組織が、何度も痛い目にあった末に成功にたどり着いている事実を忘れてはならない」と励ましている。
以降、2007年3月、2008年8月と計3度の失敗が続いたものの、マスクは社員をこう言って励まし続けている。
「もうすぐじゃないか。今度こそいける。こんなことでへこたれるな。すぐに冷静になって、何が起きたのかを見極めて、原因を取り除けばいい。そうすれば失望は希望と集中に変わるんだ」
新たな挑戦をして失敗した時、求められるのは「諦める」ことでも、「もとに戻す」ことでもない。「なぜ失敗したのか」原因を調べて、「どうするか」を考えて、前に進むことだ。
ホンダの創業者・本田宗一郎の口癖は「失敗したからといって、くよくよしている暇はない」だった。失敗した時、「なんで失敗しちゃったんだろう」と悩み、立ち止まっている暇があるなら、間髪を入れずその原因を究明して改善、次の瞬間には一歩を踏み出せ、と言い続けていた。
ロケットの打ち上げに失敗したことで、マスクが失望したのは確かだ。
しかし、「部下を叱る」とか、「くよくよ思い悩む」ということはなかった。
「原因を究明して前に進む」ことを選び、社員にもそう言い続けている。
2008年9月、スペースXはついに打ち上げに成功し、その成功がNASAとの巨額契約をもたらすこととなった。
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