宇宙ビジネスへの参入を本気で考えた
■アイデアを「語る人」になるな。「実行する人」になれ!
ペイパルの売却によって、1億6500万ドル(約223億円)の資金を手にしたマスクは、それまで「アイデアがあっても資金の関係で実行できなかった」ことを、具体的にスタートさせていく。
当時の思いをこう話している。
「21世紀に課された最大の課題はエネルギー問題です。ガスや石油。もうそれが枯渇しかかっていることは皆、知っています。早く消費エネルギーから持続可能なエネルギーにシフトしていかないと。また、さらにその先のことを考えた、人間の移住先としての宇宙空間にも強い関心を持っています」
目指していたのは、地球環境を守るための持続可能なエネルギーの実現と、人類に新しい環境を築くための宇宙への旅立ちだ。
この頃からマスクは、宇宙ビジネスへの参入を本気で考えるようになっていく。
例えば、火星に「バイオスフィア」とよばれるミニ地球環境を持ち込んで植物を栽培すると、どれだけコストがかかるかを専門家に試算してもらっているのだ。
そして、専門家から算出された金額は、マスクにとって負担可能な金額だった。
しかし、問題は必要な資材をどうやって火星に運ぶかである。
ボーイング社製のロケットを使って必要な資材を運ぶとすれば、さらに6億ドル(約810億円)が必要となる。
この金額は、さすがのマスクの手にも負えなかった。しかし、そのくらいでは自分のアイデアを諦めないのがマスクである。
「他に安いロケットがあるのではないか」と考えたマスクはロシアに出かけ、関係者と価格交渉を行なう。が、どうしてもロシア製ロケットの性能を信頼することができない。
となると、後は自前でつくるしかない。とはいっても、お金も労力も時間もとんでもなくかかる事業だ。普通の人ならここで諦めるところである。しかし、マスクは違った。
「こうなったら、自分でロケットをつくるしかない」
安くて信頼性の高いロケットを誰もつくれないとしたら、自分でつくればいい。
そう考えたマスクは、すぐに行動に移す。
2002年、マスクはロケットの開発会社「スペースX」を設立、自らCEO(最高経営責任者)兼CTO(最高技術責任者)に就任したのだ。
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