次世代の経営人材に求められるもの
ESG投資に関する笹原英司氏による解説の補足
ESG投資については「持続可能な未来に向かって責任ある投資(PRI)」を2006年に提唱した国連の役割も大きいといえるでしょう。PRIに署名した運用機関は3,038にのぼり、総運用資産額は2020年時点で1景円を越えています。
ESG投資資産額は日本において223兆円、グローバルでは3,000兆円の規模です。 2020年度にはエンゲージメントテーマとして重視する事項として「健康と安全」が2位に、「人権」が3位に入るなど、Well-being経営が注目されているのがわかります。
では具体的にどのようなWell-being経営が必要となってくるのでしょうか。トップラインとしての戦略的な経営の鍵になる「Well-being経営」について、予防医学研究の第一人者として活躍する石川善樹氏(公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事)が解説します。
これからの経営戦略における「トップライン」の在り方
そもそも「Well-being経営」とは?
Well-beingとは、WHO(World Health Organization)を構想したスーミン・スー博士が提唱したもので、「健康とは、身体的・精神的・社会的にWell-beingな状態」だと解きます。Well-beingには、GDPなど客観的なものと、幸福度や生活満足度など主観的なものがあります。このうち、世界的に大きなトレンドとなっているのは主観的Well-beingです。
たとえばイギリスでは、客観的な指標としてのGDPが漸増する一方で、主観的なWell-beingの数値はここ数年大きく落ち込んでおり、政治や経済の混乱につながっているとされます。
客観的なGDPでは捉えきれないものがある。業績では順調にみえても、働く人にとっては環境が悪化し、つもりつもって社会へも悪影響が出ているわけです。見方を変えると、主観的なWell-beingを改善することで企業の業績も向上するといえます。
Well-beingの推進には3つの方向があります。 ひとつは、国連やOECDなどが主導するグローバルなもの。もうひとつは地方行政が主導するローカルなもの。そして、企業経営者や投資家が行うWell-being経営です。Well-being経営では、企業の価値評価、企業の価値創造におけるWell-beingの視点の意義・重要性を掘り下げていきます。
Well-beingの流れは、ブータンやイギリス、ニュージーランドなど、さまざまな国が重要目標として位置付け始めています。日本でも担当相の設置が議論されるようになってきているものの、具体的イメージはまだない状態です。各企業がばらばらに取り組んでおり、共通のイメージがつかめていないのです。
このあたりはSDGsとの向き合い方と似ているかもしれません。新しい概念が入ってくるときは、少しずつ具体的なものが集められ、新しい基準として形づくられるようになります。Well-beingの流れも同じ。経営投資の流れが人材戦略に向かういま、ディファクトスタンダードがつくられるのは時間の問題になっているといえるでしょう。
株主資本主義からステークホルダー資本主義へ
Well-being経営は、雇用している従業員がごきげんになるためのものではありません。その本質は、経営に関わるすべてのステークホルダーのWell-beingが調和していく状態を指しています。
このうち、ますます重要になってくるのは、まだ誕生していない者も含んだ「将来世代」でしょう。これからの企業活動や国家経営は、次世代を包括した社会全体の調和をもってはじめて、中長期的に安定し、持続可能となっていくのです。
※以上が石川善樹氏による「Well-being経営」についての解説
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