いま注目される「ESG投資」
世界の動きは、従来型の財務情報を重視した投資から、企業の持続可能性を視野に入れたESG投資へと移ってきています。定量的な財務情報の必要性はすでに当たり前。定性的な非財務情報が重要な要素になっているのです。非財務情報の指標として、これまでSRI(社会的責任投資)が中心でした。
SRIでは倫理的価値観が重視され、財務事情と並行して企業のもつ社会的・倫理的価値観をみて投資家の期待を反映させる傾向にありました。歴史的な流れをみると、1920年代は倫理的価値観に基づく投資、1960年代は社会問題を意識した投資、1990年代以降は環境問題に配慮した投資がトレンドでした。
人生100年時代における資産形成が必要な現在、近年の社会問題に対する要望を踏まえつつ、企業の持続的成長を考慮した形で企業活動をみる傾向にあり、より具体的で長期的な活動を明らかにする必要が高まっています。ESG投資はその延長上にあります。
ESG投資のきっかけは「SDGs」
持続可能性を問うESG投資のきっかけはSDGsにあります。SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連で定められた「持続可能な開発のためのアジェンダで、2030年までに達成を目指す17の目標が掲げられており、国を挙げての大きな取り組みがなされています。
ESG投資では、SDGsが掲げる目標を経営戦略に組み込むことにより、企業価値が持続的に成長すると考えます。
これまでは財務状況や市場の動向を参考に、倫理側面を考慮した比較的短期的観測から投資判断が行われてきたものが、いまは世界規模、長期的な視野で持続可能な活動を考えなければ企業の存続そのものが危ぶまれ、投資リスクが高まると考えられているわけです。ESGは、投資リスクを明確にするための指標ともいえます。
環境対策はもはや当たり前…もっとも注目される「S(Social)」の観点
ESGとは、次の3つの観点に整理されます。
S:社会(Social)労働条件の適正化や人権対策、多様化推進、地域貢献など
G:ガバナンス(Governance)情報開示や法令遵守、不祥事回避など
簡単にまとめると、ESG投資により、社会と環境の問題への取り組みと企業統治が持続可能な企業の利益を生み出すと考えるわけです。
このなかで、いま注目されているのは「S(Social)」の観点です。ESG研究所の「ESG投資実態調査2020」によると、2020年度に重視するエンゲージメント(投資家から投資先企業への積極的な働きかけ)テーマの2位に「労働慣行(健康と安全)」が入りました。
「気候変動」は全体で94%、1番目に重視するものとして1位になっています。これに対し、「労働慣行(健康と安全)は全体で62%、2番目に重視するものとして1位となりました。また、「人権」も全体で3位、2番目に重視するものの2位になっています。
気候変動などの環境課題への対策はもはや当たり前の領域になっており、これからの投資傾向は健康や安全といった労働慣行や人権などの社会的側面、特に人への対策を重視するようになっていることがみてとれます。
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