日本はすでに乗り遅れている…世界企業戦略のトレンド「Well-being経営」とは?

日本はすでに乗り遅れている…世界企業戦略のトレンド「Well-being経営」とは?
(写真はイメージです/PIXTA)

ESG/SDGs時代、世界の企業戦略トレンドは「人材」を最重要視する「Well-being経営」です。すでに日本企業はこのトレンドに遅れをとっていると指摘されていますが、なぜなのでしょうか? これらの答えとともにWell-being経営推進のための具体策をみていきます。

ESG/SDGs時代に企業価値を生む「人的資本経営」

現在の投資トレンドではESG投資はもはや必須といえますが、そのなかでも今後の焦点として注目されているのが人的資本への投資です。

 

たとえば建設会社の場合、事故などで労働安全衛生法違反が発覚すると公共入札指名停止になります。事業収入に直接の影響が出るため、社内における労務安全部門のプレゼンスが大きくなっています。

 

同様に、人的資本管理の不備により機関投資家の投資対象から外されて株価が下がる事態を招けば経営者の責任が追及されます。

 

経営戦略として必須となった人的資本経営。見方を変えれば、企業価値を高めるトレンドとして、戦略的に人的資本を高める経営を行うことで、アドバンテージをとることができるといえます。

 

では、具体的に人的資本経営において、どのような点に着目していけばよいのでしょうか。ここでは、ESG/SDGs時代に必要な人的資本経営の枠組みを、ボトムラインとしてのレギュレーションや人的資本政策といったボトムラインのあり方と、それらを踏まえたトップラインとしての経営戦略のあり方にわけて考えていきたいと思います。

 

【図表1】トップラインとボトムライン

 

まず、経営戦略を構築するためのベースとなるボトムラインを考えていきましょう。

 

投資のトレンドを握るアメリカ企業の健康やWell-being分野のESG/SDGs投資について、特にISOやレギュレーションを中心に、欧米のヘルステック事情に精通した笹原英司氏(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会理事、在日米国商工会議所ヘルスケア委員会副委員長)に解説していただきます。

これからの経営戦略における「ボトムライン」の在り方

米国の先進的経営で経営の中枢となるものは「健康・安全」

アメリカでは、すでに健康や安全を企業価値の中核として捉える動きが加速しています。たとえばアップルでは、「EHS(※)ミッションステートメント」を掲げ、従業員や顧客の健康、安全の保護にコミットし、プロダクトの開発などすべてのビジネスに対し健康、安全管理の視点を統合するとしており、評価基準を設けています。

※EHS:環境・健康・安全

 

GE(※)も同様に、EHSポリシーとして、発電やエネルギー、金融など、業種・業態が変わっても、一貫したEHSプログラムを適用し、EHS法制およびGEの標準規格を遵守することをうたっています。

※GE:ゼネラル・エレクトリック社、アメリカを主な拠点とし電気事業をルーツとする多国籍コングロマリット企業

 

アメリカの場合、健康や安全の開示は内部の従業員にとどまりません。外部委託先や請負の働き手、インターンも、またトップマネジメントの健康や安全も含まれているという特徴があります。

 

もうひとつ、アメリカでのWell-being経営の特徴は、医療機関から経営支援が始まっていることが挙げられます。 たとえば、オハイオ州のクリニックでは、患者個人に向けてだけではなく、雇用する企業向けのソリューションとしてアプリやポータルを開発しています。ニューヨーク州で最も大きい医療機構であるマウントサイナイでは、ニューヨークの金融サービスが健康やWell-beingの支援をしています。

 

余談ですが、医療機関と金融機関がつながったきっかけは9.11の同時多発テロ事件でした。多くの犠牲になったのが金融関係だったこともあり、ニューヨークの労働安全性に積極的に関わるようになったのです。

 

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本記事は株式会社WellGoの記事より一部を抜粋・再編集したものです。

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