「帰省しても何もしてくれない」老親の嘆きと子の戸惑い…親子の会話が成り立たないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもは帰省しても何もしてくれない」と嘆く人がいますが、子どもに言葉に出して頼んでいないために起きる認識の違いです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

老親は甘え上手になることも必要

■「老いては子に従え」は間違っている

 

ひとりというのは気ままです。好きなものを食べて好きなときに寝て、ご飯をこぼしたり、トイレで粗相したりしても文句を言われません。自分でたんたんと片づければいいのです。

 

また、若い人たちにはわからないことがいっぱいあります。老いてできなくなったことがあるという事実が子どもにも伝わらず、顔をしかめられます。でも、それは仕方ないこと。自分も働き盛りのときに親の気持ちなどわかっていたでしょうか。

 

地方ではいま、介護保険のサービスや宅配や配食のサービスを利用して長く在宅で暮らしている方が多くいらっしゃいます。訪問ヘルパーさんができない窓掃除や草取りは、シルバー人材センターや有料ヘルパーに頼む、お盆に帰省した子どもや孫がやってくれるという方もいました。

 

ときどき「子どもは帰ってきても何もしてくれない」という方がいますが、これも言葉に出して頼んでいないためだと思います。

 

「換気扇を洗ってほしい」「網戸の掃除をして」など、細かく言わないと伝わりません。

 

子どものほうでも何をしたらいいかわからず、親の「大丈夫」という言葉を信用します。まして、子どもの配偶者となれば、よけいなお節介はひかえます。冷たい人間だからではないと思います。

 

子どものほうは、親に頼まれた仕事をすると達成感ができて、帰省した思い出にもなり、よい気持ちになるでしょう。

 

気持ちは自立していても、甘え上手になることも大事です。子どもでも近所の人でも役に立つ人は使うという考え方でいいのです。

 

前に介護職の方に聞いたことがあります。都内で子どもがいない方は在宅でがんばって暮らせるけど、子どもがいると「家を売って、さっさと施設に入れられてしまうの。家族は面会にも来ないし、帰れる家はもうないので、かわいそう」という話でした。

 

「老いては子に従え」などという言葉がありますが、いまは違います。老いても自分の希望はしっかり持ちましょう。

 

まだまだ元気なのに早くから施設暮らしを考えるのではなく、ひとりでも楽しく生活していく方法を学習していってほしいのです。

 

たしかにひとりはさびしい。このさびしさは人間につきまとうものです。子と暮らそうが、施設に入ろうが、さびしさはついてまわります。

 

人間がさびしいのは当たり前とあきらめて、楽しく暮らすために自分には何が必要かを考えるのも、80代を迎える前にやっておくべきことかもしれません。

 

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    ルネクリニック東京院 院長

    1960年生まれ。
    東京大学医学部卒業。
    東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカカール・メニンガー精神医学学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、ルネクリニック東京院院長。
    30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として高齢者医療の現場に携わる。
    『自分が高齢になるということ』(新講社)、『年代別医学に正しい生き方 人生の未来予想図』(講談社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『「人生100年」老年格差』(詩想社)『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『80歳の壁』(幻冬舎)など著書多数。

    著者紹介

    連載人生100年時代を豊かな心で健康に生き抜くための処方箋

    本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

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    和田 秀樹

    廣済堂出版

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