就活でも効果的なエピソードによる自己紹介
■エピソードによる自己紹介の効果
エピソードを用いた自己紹介には、次のような効果があります。
(1) その人の「人柄」が分かる
前回の佐藤さんの例や、先ほどの私のエピソードで感じて頂いたと思うのですが、エピソードの中には、特定の状況下で、その人がどのようなものの考え方、行動を取ったかが出てきますから、その人の人柄の一面が分かります。佐藤さんの場合だと、不遇な状況に置かれても夢を諦めないで、こつこつと努力を続ける人だということが分かりましたし、私の場合では、自分がやりたいことがあれば、上司の反対も押し切るような性格であるということがお分かりになったかと思います。
また、エピソードの中には、その人の信念や信条のようなものが語られることもあり、それが単にキーワードとしてだけでなく、実際の場面でその信念や信条のようなものが発揮されたかどうかも分かるので、その人の人間理解にも役立ちます。
(2)その人の強み・良いところが分かる
「嬉しかったこと」や「うまく行った体験」を聴いていると、その人の良い点、強みが分かってきます。例えば佐藤さんの場合、逆境にも強いとか、ふてくされない等の良いところがあることが分かります。
つまり、うまくいったこととか本人が嬉しくなったことの中には、何か本人の良いところ、長所が含まれているのです。
ただそれを、手柄話のように話をすると、鼻持ちならなくなるのですが、事実に即してリアルに話してもらうと、他の人に実感をもって伝わります。
この利点は、面接などにも応用すると効果的だと思います。自分のうまくいった体験や嬉しかったことを面接官に聞いてもらうことで、自分の強みをさりげなく売り込むことができます。
(3)その人の体験を疑似体験できる
もう一つの効果は、エピソードで語られたその人の体験を、疑似体験できるということです。リアルに語ってもらうと、まるでその場に居合わせたような感じがするものですから、聞き手からすると、そういう状況になった時に、自分もそうすればうまくいく可能性があるということが分かります。
私も大学4年生の時に、同級生からある企業の就職面接に受かった時の体験談を聞いて、「なるほどそうやってしゃべればいいのか!」と合点し、別の会社でそれを真似して、実際に合格したことがあります。他の人の成功体験は、真似する価値があります。
これは、営業活動における提案やコンペ等にも応用することができます。ただし、丸々状況が同じということはないので、状況に合わせた応用が必要です。
逆に失敗体験等を聞いた場合には、同じようなことを言わない、しないに越したことはありません。私も大学受験に失敗した先輩の話を聞いて、「あぁ、そういうことはやっちゃいけないんだな」と理解し、同じ轍を踏まないようにしました。
(4) 短時間で打ち解けられる
エピソードで、その人の人柄の一面が分かると、話しやすくなり、比較的短時間で打ち解けられます。若い人たちなどは、エピソードによる自己紹介がグループ内で一巡すると、もうそこから屈託なく話し始める人がいます。もともとそれを狙って行っているものではありますが、あまりの即効性に驚かされることがあります。
また、語られたエピソード自体が以前のものだったりすると、その頃からその人を知っているかのような錯覚にとらわれます。例えば、学生時代に剣道の試合で優勝したような話など聞くと、その人を学生時代から知っているかのような感じがしてきます。
(5)グループ討議が活発になる
研修の場合、以上のような効果が相乗して、お互いに遠慮がなくなり、本音で話せるようになり、お酒が入らなくてもすぐにグループ討議が盛り上がってきます。
あまり脇道にそれないようにコントロールする必要がありますが、通称アイスブレイクと呼ばれる、堅くなっている雰囲気を和ます効果があります。アイスブレイクというと、何か人を笑わせなければいけないような強迫観念にとらわれる人がいますが、そんなことはありません。
自分の嬉しかったことや、うまくいった話を紹介するだけで十分アイスブレイクになります。ただし、失敗体験談など話をすると「ご愁傷様でした。」のような暗い雰囲気になる可能性がありますので、話題の選び方は重要です。
井口 嘉則
オフィス井口 代表