エピソードによる自己紹介は人柄がにじみ出る
■エピソードによる自己紹介の仕方
エピソードによる自己紹介の仕方は、いたって簡単で、事前に書いておいた「エピソードによる自己紹介」をグループ内で順に読み上げるだけでいいのです。
そうすると、それまで硬い表情だった受講者の表情がみるみる緩み、会話が活発に交わされるようになります。自由時間があると、そのエピソードの続きを聞いたり、関連した自分の体験を紹介しあったりしています。
グループ内のメンバーの人となりが分かると、心理的ガードが下がり、会話が活発になります。そうすると懇親会でお酒が入るまで待たなくても、グループ討議が活発になるのです。
今の事例は、研修での使い方の紹介ですが、その他の場合でも、このエピソードによる自己紹介を効果的に使うことができます。
初対面の人とは、通常はまず名刺交換から始め、会社名や部署、仕事内容を説明するでしょうから、それに続いて「○×といえば、私自身こんな経験がありまして…」というようなイントロの言葉を入れて、エピソードを紹介します。
私自身の場合は、次のようなエピソードを紹介することがあります。
▶私のエピソード
<私は、日産自動車に11年半勤務の後、旧三和総研に転職し、コンサル部隊に入りました。三和総研では、日産時代の海外部門の中期経営計画立案スキルを活かして、旧三和銀行系のいろいろな取引先企業の中期経営計画立案プロジェクトのリーダーをやらせてもらいました。その中には三和総研自体の中計プロジェクトのリーダーの仕事もありました。
数年して、ある日出版社の人から、「中期経営計画について本を書いてみませんか?」と引き合いがありました。どうやら私の友人が、編集者に私のことを紹介してくれたようなのです。私はかねがね「大きな名刺」として自分が書いた本を出したいと思っていたので、引き受ける気になり、財務や会計のことは公認会計士の資格を取っていた部下を誘って、社内で出版企画書を作って上司の本部長に出しました。
当初、銀行出身の本部長は、「それは良かったね。」と喜んでいてくれたのですが、「ちょっと検討させてくれ」と言われて、数日後に、呼ばれて行くと、ちょっと困った顔をして「井口君、あれは止めた方がいいんじゃないか」と言われました。
「えっ!?」と驚いて言葉に詰まった私は、「どうしてですか?」と聞き返しました。すると、「むにゃむにゃむにゃ」とはっきりしない答えでした。どうやら、他のコンサルタントが反対したようでした。
会社としていろいろな中計プロジェクトを受注してやっている関係上、特定のコンサルタントに「三和総研の中計策定はこのように行います」とやられると、コンサルタントごとに独自のやり方をしている中で、画一化は困るということのようでした。
当時、社内では、後発のシンクタンクである三和総研の名を高めるには、出版活動等広報活動をもっと行っていくべきだという論調があったので、私はそれを名目に再度本部長のところに行き、「いや、どうしても出させてください。執筆時間は自分たちで捻出しますから。」と言って、押し切りました。
その結果、1999年に世に出たのが、『中期経営計画の立て方・使い方』(かんき出版)です。執筆前に、クライアントであった経営企画の方々に会って、「今度、中期経営計画の本を出すことになっているのですが、どんな本だったらいいですか?」と聞いてまわって、そのニーズにこたえられるように原稿を書きました。
出版後売れ行きを気にしていると、ある同僚から、「知り合いの会計士が、井口さんの本を自分のクライアントに勧めておいてくれたそうですよ。」という話をしてくれました。私はその話を聞いて「これならいける!」と直感しました。世の中には公認会計士さんがたくさんいて、その人たちが自分のお客様に勧めてくれるなら、売れるに違いないと思ったのです。
案の定、お陰様で好評を博しベストセラーとなり、この出版がきっかけで仕事の引き合いが来るようになりましたし、セミナーも開催できるようになりました。
その本を出してもう20年以上になるのですが、今でも企業の経営企画の方にお会いすると、『この本読みました』とか『前の中計で使わせてもらいました』などのお言葉を頂きます。累計5万部を超え、多くの方に使って頂いてきています。思い返すと、あの時、出版を諦めないでつくづく良かったと思います。>
とこんな感じです。自分がやりたいことについては、上司の言うことを聞かない、意固地な面が出ているのではないかと思います。