Image Credit: ©AnimeJapan 2022

日本には古くからの古典が存在します。「源氏物語」は世界最古の長編小説です。日本のアニメ文化は「クールジャパン」の象徴です。日本人の物語力は、世界レベルでみても、高いことが分かります。経営コンサルタントの井口嘉則氏が著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

日本人は酒が入らないと親しくなれない?

■自己紹介を略歴から始めてしまう日本人

 

皆さんは、初めて会った人に自分を理解してもらうのに、どんなふうに自己紹介していますか? 多くの人が自分の略歴・履歴を語っているかと思います。

 

同じ会社の人に対してであれば、何年入社で、どこの部署に配属されて、どんな仕事をしてというようなふうに紹介しているのではないでしょうか? また、別の会社の人であれば、名刺を渡しながら、どこの会社に所属し、どんな部署でどんな仕事しているというような紹介の仕方をするでしょう。

 

これらは、ごく一般的な自己紹介方法ですが、実はこれではなかなかその人について分かった感じがしません。後で名刺を見ても顔が思い出せなかったり、同時に複数の人と名刺交換しようものなら、どの名刺が誰のものであったかすら、分からなくなってしまったりします。要するに印象に残っていないのですね。

 

ただ日本人の場合に、どこの組織に所属しているのかということが第一の関心事なので、会社名や所属組織名を名乗らなければならないのは確かですが、それだけでは、「あなた」という一個人は、単にその組織に属する人というだけの意味しかありません。

 

■他人が知りたいのは「その人の人となり」

 

私たちが、人と初めて会った時に、知りたいのは、第一には所属組織かもしれませんが、次に知りたいのは、その人がどんな人かということです。どんな人かというのは、単に部長とか課長とか役職階層ではなく、その人の人となり、すなわち人柄です。

 

厳しい人なのか、優しい人なのか、頑張っている人なのか、そこそこ生きている人なのか、どんなことに興味を持っているのか、どんなことに楽しみを見いだしているのか、すごい人なのか普通の人なのかというようなことなのです。

 

私は、研修やワークショップで受講者の人たちによくグループ討議をしてもらっていますが、この「人柄」が分からないと、グループ討議が一向に活発になりません。皆、相手の出方や様子をうかがっているのです。

 

よくあるのは、一日目の研修終了後に懇親会が開かれ、酒が入ったところで、警戒感が薄れて、そこでお互いについて話をする機会ができて、相手がどんな人物かが分かり、翌日のグループ討議から討議が活発になるというパターンです。つまり、「日本人は、酒が入らないと親しくなれない」といわれるやつです。

 

お酒が入って親しくなるのはいいのですが、それでは時間がかかり過ぎますので、工夫が必要です。また、コロナ禍でWeb形式では懇親会も盛り上がりにくいです。

 

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※本連載は井口嘉則氏の著書『リーダーのための人を動かす語り方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再構成したものです。

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