「会社を辞めたいなら7,000万円払え」…パワハラで男性従業員が自殺、裁判所が企業に命じた驚愕の賠償額【弁護士が解説】

「会社を辞めたいなら7,000万円払え」…パワハラで男性従業員が自殺、裁判所が企業に命じた驚愕の賠償額【弁護士が解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

社会の目が厳しくなったとはいえ、まだまだ「パワハラ」や「セクハラ」が日常的におこなわれている企業も存在します。なかには、ハラスメントによりとんでもない額の損害賠償命令が下された企業も……Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が、実際にあった3つの裁判事例を交えて、パワハラによる慰謝料と相談にかかる弁護士費用の相場を解説します。

パワハラによる「慰謝料」の相場

パワハラで認められる慰謝料の金額は、そのパワハラの程度や内容、継続した期間などによってさまざまであり、一概にいえるものではありません。なお、本記事では大まかな金額の範囲を分かりやすく表す用語として「相場」という表現を用いています。

 

一般的には、短期間や単発の暴言など比較的軽めのパワハラの場合で数万円程度、長期にわたる暴言などの場合には、その内容に応じて10万円から100万円程度の慰謝料が認められるケースが多いでしょう。

 

また、被害者が精神疾患を発症するなどして休職に追い込まれた場合や、暴行を伴う場合などには、100万円から400万円程度の慰謝料が認められる場合もあります。

 

また、被害者が自殺をしてしまったケースや後遺障害が残ってしまったケースなどでは、さらに高額となる可能性が高いでしょう。

パワハラで慰謝料が認定された実際の裁判例

パワハラで会社に対しての慰謝料請求が認められた事例には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、3つの例を紹介します。

 

同僚間の暴行について使用者に損害賠償責任を認めた事例

備品管理の業務分担を起因として、女性社員Xに対して同じ課に所属する男性社員Yが暴行を加え、女性社員Xが顔面挫創と頸椎捻挫の傷害を負った事例です。

 

女性社員Xは、その後手のしびれなどが残り、2年半にわたって休業しました。

 

会社は、この休業期間中に女性社員Xを解雇しています。

 

この事例では、勤務先企業の使用者責任が認められ、男性社員Yと連帯して60万円の慰謝料の支払義務を負うこととされました。

 

また、女性社員Xの解雇は無効であると判断されています。※2

※2 厚生労働省 あかるい職場応援団:同僚間の暴行について使用者に損害賠償責任を認めると共に、同暴行に起因する欠勤中の解雇を無効とした例

 

パワハラや暴行等と自殺との間に相当因果関係有りとされた事例

男性従業員Xが、勤務先企業の役員2名から日常的に殴る、蹴る、頭を叩くなどの暴行や、「てめえ、何やってんだ」「ばかやろう」と大声で怒鳴る、「会社を辞めたければ7,000万円払え、払わないと辞めさせない」と発言するなどのパワハラを受けていた事例です。

 

また、「私は会社に今までにたくさんの物を壊してしまい損害を与えてしまいました。会社に利益を上げるどころか、逆に余分な出費を重ねてしまい迷惑をお掛けした事を深く反省し、一族で誠意をもって返さいします。2ヵ月以内に返さいします」などと書いた下書きをもとに退職願を書くよう強要しました。

 

さらに、この下書きには、「額は一千万~一億」と鉛筆で書かれた後で消された跡があったようです。

 

その後、男性従業員Xは自殺をしています。

 

これを受け、男性従業員Xの遺族である妻子が会社と会社役員2名に対して不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起しました。

 

判決は、会社役員1名によるパワハラや暴行、退職強要などの不法行為と男性従業員Xの死亡との間に相当因果関係があったことを認め、会社と会社役員1名に対して合計約5,400万円の損害賠償を命じています。※3

※3 厚生労働省 あかるい職場応援団:パワハラ、暴行等と自殺との間に相当因果関係有りとして高額の損害賠償

 

就業規則の書き写しなどが違法であるとして損害賠償請求が認められた事例

職員Xが、上司から就業規則の書き写し等の教育訓練を命じられた事例です。

 

職員Xは国鉄労働組合の組合員であり、勤務中にバックル部分に国鉄労働組合マークが入ったベルトを着用していました。

 

これに対して上司が就業規則に違反する旨述べ、取り外すよう命じたものの、職員Xがこれに応じなかったため、教育訓練と称して、およそ1日半にわたり、就業規則の書き写しや、書き写した就業規則の読み上げを命じられたものです。

 

これに対し、職員Xは精神的・肉体的苦痛を与えられたなどとして、損害賠償請求を求めました。

 

この事例では、会社の使用者責任と上司の不法行為責任が認められ、会社と上司に連帯して20万円の慰謝料と5万円の弁護士費用の支払いが命じられています。※4

※4 厚生労働省 あかるい職場応援団:労働者に対して会社が課した就業規則の書き写し等の教育訓練が、裁量権を逸脱、濫用した違法なものであるとして、損害賠償請求が認められた事案

 

次ページ会社が慰謝料請求された場合の弁護士費用相場は

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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