(写真はイメージです/PIXTA)

社内でパワハラが発生した際、従業員が「会社は信用できない」などの理由から労基署へ通報した場合、企業はどうすればよいのでしょうか。今回は、パワハラ相談に対する労基署の対応や、従業員が労基署へ駆けこむ前・後にそれぞれ企業ができる対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

「労基署(労働基準監督署)」とは

労基署は、労働基準監督署の略称であり、厚生労働省が所轄しています
※ 厚生労働省:労働基準監督署の役割

 

労基署は全国に321署存在し、各労基署はおおむね次の組織で構成されています。

 

・「方面」(監督課):労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付や、相談対応、監督指導を行う
・「安全衛生課」:機械や設備の設置に係る届出の審査や、職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導を行う
・「労災課」:仕事に関する負傷などに対する労災保険給付などを行う
・「業務課」:会計処理などを行う

 

労基署は、主に労働基準法違反をした企業への監督指導などを行う組織であると考えておけばよいでしょう。

 

労基署と「労働局」との違い

労基署と似た組織に、「労働局」が存在します。労働局は各都道府県に設置されており、労基署の上部組織に該当します。

 

労働局では「総合労働相談コーナー」を設けており、労働基準法違反となる内容のみならず、パワハラやいじめ、嫌がらせ、セクシャルハラスメントなど、職場にまつわるあらゆる相談をすることが可能です
※ 東京労働局:労働関係相談先一覧

 

また、労働局長による助言・指導制度や紛争調整委員会によるあっせん制度により、労働にまつわる問題の早期解決を支援しています。これらについては、後ほど解説します。

 

なお、一般に「労基署に相談する」という場合、正確にはこの「総合労働相談コーナー」を利用しているケースが大半と思われますが、本記事では一般的な表現にならって「労基署に相談」としています。

従業員がパワハラを労基署に相談する主な理由

社内でパワハラが発生した場合、従業員が労基署に相談をする場合があります。

 

では、なぜ会社へ相談するのではなく、労基署へ相談する従業員がいるのでしょうか? 考えられる主な理由は、次のとおりです。

 

「労基署ならどんな労働トラブルも解決できる」と誤解している

後ほど解説するように、労基署は労働にまつわるトラブルについてなんでも解決してくれる機関ではありません。

 

しかし、労働に関連して起きたトラブルは、すべて労基署に相談すればよいと考えている従業員も少なくないでしょう。

 

また、なんとなく会社が労基署を恐れているとのイメージを持っており、「労基署に相談する」といえば、会社に対して優位に立てると考えている場合もあります。

 

会社にパワハラを相談したが取り合ってもらえなかった

パワハラについて先に会社に相談したにもかかわらず、まともに取り合ってもらえなかった場合や、会社に相談をしたことで不利な状況に追い込まれた場合などに、労基署へ相談するケースがあります。

 

また、そもそも会社にパワハラについての相談窓口がなく、誰に相談すればよいかわからない場合も少なくないでしょう。

 

「会社に相談しても解決しない」と考えている

パワハラをしている人が勤務先企業の役員である場合や、会社ぐるみでパワハラが行われている場合、社内でパワハラが横行している場合などには、会社へ相談をしても無駄であると感じている可能性があります。

 

従業員が会社へ相談しても解決する見込みが薄いと考えている場合には、はじめから労基署に相談する可能性が高いでしょう。

 

次ページ労基署はパワハラ問題へどこまで介入する?

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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