(※写真はイメージです/PIXTA)

受け取ることのない保険金のために、保険料を払い続ける。基本的には損をするのに、宝くじを購入する…。私たちが時折「経済的には損をするのに、なぜやった?」という非合理的な行動をとってしまうのは、どうしてでしょうか。太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋し、そのヒントとなる「行動経済学の代表的なアイデア」を紹介します。

特定の状況で起こる「システム1のエラー」

普段とても便利なシステム1ですが、実は、特定の状況で決まったかのようなエラーを起こすことが多くの研究でわかってきました。

 

システム1は頑張っても止められない自動発動型のシステムですから、結果、みなさんの意思決定は望ましくない方向、誤った方向に誘導されてしまいます。この問題を考えるため、システム1の特徴をもう少し確認してみましょう。

 

システム1の情報処理が速い理由のひとつは、経験を頼って類似のシチュエーションに当てはめることで、直感的に判断できることにあります。

 

この処理の仕方は「ヒューリスティクス」(経験則の意)と名付けられています。つまり、過去の経験などから“大体こんなものだろう”と判断しているわけです。大抵の物事に苦労せずザックリ対応できるのは、このシステム1のおかげです。

 

他にも、システム2を駆使しても解けなさそうな推論でも、わかりやすい状況に置き換えて結論を出そうとしてくれたりもします。たとえば、頭が痛ければ肩こりのせいかと考えたり、雨が続けばそろそろ梅雨入りかと考えたり。

 

でも、もともと簡単な処理を行なうためのシステムで強引に計算するわけですから、様々な非合理的な問題を私たちの意思決定にもたらします。

 

ただ多くの人が陥るミスについてはパターンが見つけられていて、比較的には予測が可能です。こうしたエラーは「バイアス」と呼ばれます。

4つのクイズでバイアスがあるか試してみよう

さて、みなさんの脳のシステムがどこまで適切に情報処理ができるか、まずは試していきましょう。いくつか「ヒトがハマると予想されている代表的なバイアス」に絞ってサクッと考えていきます(本気のクイズは4番目です)。

 

<クイズ1>

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【質問】図表2のうち、「か」で始まる単語と、「か」が3番目に来る単語と、どちらのほうが多いでしょうか?

 

[図表2]「か」で始まる単語と、「か」が3番目に来る単語、どちらが多い?

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私の予想が正しければ、とりあえず途中で数えるのをやめて、この文章に戻って来ているはずです(私が挑戦したときはそうしました)。

 

ところで、これはいじわるな質問で、答えはどちらの単語も10個でした。

 

おそらく正確に数えた人は少ないはずですが、どうしてでしょう?

 

「システム2をわざわざ動かすのが面倒だったから」ですよね。そこで、システム1が勝手に動くわけですが、そうすると「か」で始まる単語が多いように感じたのではないでしょうか。

 

図表2の冒頭には「か」で始まる単語が多く配置してあります。また、「か」が3番目に来る単語を探すより、「か」で始まる単語を探すほうが、容易であったはずです。

 

この質問では、「か」で始まる単語がとにかく目につくように仕掛けられていました。こうした利用しやすい情報に飛びついて推論を進めてしまうために生じるエラーは、システム1の情報処理の特徴のひとつで、「利用可能性バイアス」と呼ばれます。

次ページクイズ2~3

※本連載は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

太宰 北斗

ワニブックス

「税抜価格を表示したら売上が上がる!?」 「経済学を学ぶと所得が上がる!?」 「競馬で賭けるなら“本命” “大穴”は外すべき!」 「3割バッターが最終試合を休む理由とは?」etc. “リアルに得する経済学”をおもしろい…

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