“公平公正な安売り”よりも「割安の興奮」が大事
目に見えていないと税金を計算してくれず、キリがいいかどうかでも評価が違ってしまう。それでも、しっかり伝えれば、さすがに気づいてくれるはずですよね。
創業100年の歴史を誇る老舗(しにせ)デパートのJCペニーが取り組んだのは、そうした価格戦略でした。
中価格帯での競争を強みにする同社は、伝統的にクーポンやセールを多用してきました。結果、当時は定価での取引が1%にも満たない状況だったと言います。
価格競争の激化や、ブランドの棄損を懸念した新任のCEOは、ここである決断をしました。
「〇.99ドル」と表記していた価格の端数を撤廃、クーポンの発行も無くす、公正公平な「フェア・アンド・スクエア戦略」を打ち出したのです。
目指すのは、いつも魅力的な価格で商品を提供し続けることでした。実際、専門家の調査によると、競合他店よりも安い価格設定を導入できていたと言います。
つまり、実質的に消費者が支払う価格は、従来から変わりがないか、むしろ安くなっていたわけです。
さて、作戦実行の結果はすぐに四半期決算にも表れます。
売上は前年比19%減、来店客中の実購買客比率も低下、1.63億ドルの損失を出す結果となりました。
何がいけないのでしょうか?
JCペニー側は「計算して(do the mass)」と大きく打ち出した広告なども展開しましたが、その後も業績を回復できませんでした。
せっかく値引きをしっかりしたのに、「割安だ」と感じる興奮が、実際の割安さの魅力を上回ってしまうなんて不思議です。
その興奮が幻想だとしっかり伝えてもなお、消費者にはなかなか理解できなかったようで、非合理な思考に縛られた消費者の怖さがうかがえるエピソードにも思えます。
でも、「エブリデイ・ロープライス」で成功しているチェーン店もありますよね。違いはどこにあるのでしょう。