(※写真はイメージです/PIXTA)

伝統的な経済学では、人はいつでもどこでも合理的であると仮定しますが、現実の私たちは、「損を避けたはずなのに損をする」という変な行動をとることも珍しくありません。太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋し、損得計算をするときに問題となる、私たちの「非合理的な特徴」を見ていきましょう。

「損失は絶対イヤ!」の価値判断、プロスペクト理論

「損を避けたはずなのに、結局、損をしてしまう」という変な行動を、どう説明したらいいのでしょうか。

 

ここで、行動経済学者・カーネマン氏とトヴェルスキー氏が、期待効用理論は現実に即していないとして、代わりに主張した「プロスペクト理論」について紹介しておきましょう。

 

前回は、「合理的行動の前提になるヒトの認知などの情報処理機能が、いつでも、どこでもしっかり機能するかは怪しい」ということを確認してきました。

 

プロスペクト理論では、心理学で考えられてきた認知・判断の限界という観点ではなく、「損か得か」「うれしいか悲しいか」という、人の心の満足度の感じ方という観点から「ヒトがどのように物事の価値判断をしているか」、その非合理的な特性を説明していきます。

 

ポイントは3つ。

 

●心の満足感(心理的価値)は「水準」ではなく「変化」で決まる

●何かを損する悲しみは、同じものを儲けた際の喜びより大きい

●リスクが好きか嫌いかは、損をしそうかどうかで変わる(損をするならリスクを追求するし、儲けがあるならリスクは避けたい)

 

なんだかよくわからないかもしれませんが、大まかには、損失が出るのは絶対に嫌だという「損失回避」の特性を言い表しています。

 

まずは“損失”とは何か、確認をしておきましょう。

 

-------------------------------------

【質問】次の選択肢のうち、どちらがより満足できるでしょうか?

A…あなたは今日、100万円のボーナスをもらいました。でも本当は200万円の予定でした

 

B…あなたは今日、100万円のボーナスをもらいました。でも本当は50万円の予定でした

-------------------------------------

 

満足できるのは、もちろんBですよね。

 

200万円の予定が100万円になったのなら、差し引き「100−200=マイナス100万円」。ほとんど誰もがそう考えます。

 

これが満足感が「水準」ではなく「変化」で決まるという意味です(なお、プロスペクト理論では、心の満足感を「心理的価値」という言葉で言い換えています)。

 

このとき、心の中でなぜか損得の計算基準となっている金額のことを「参照点」と言います。実際にもらったのは100万円でも、参照点が200万円ならマイナス100万円(つまり損)、参照点が50万円ならプラス50万円(つまり得)と考えるというわけです。

 

参照点は、予定のボーナス額かもしれませんし、隣の人のボーナス額かもしれません。参照点はお金に限らずなんでもよくて、いずれにせよ、心の満足感に影響しそうな要因の変化を表す際に「基準(0)」になるものを指します。

 

重要なのは、参照点より減るのだったらなんでもかんでも損失で、「何かを得する喜びは、それを損する悲しみに絶対勝てない」ということです。結果、損が出るのを避けようとする。これが、「損失回避」と呼ばれる特性です。

 

硬い話はさておき、早速、現実世界のどんなところに「損失回避」が見られるか紹介していきます。

次ページバーディパットが「カップ手前で止まりやすい」ワケ

※本連載は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

太宰 北斗

ワニブックス

「税抜価格を表示したら売上が上がる!?」 「経済学を学ぶと所得が上がる!?」 「競馬で賭けるなら“本命” “大穴”は外すべき!」 「3割バッターが最終試合を休む理由とは?」etc. “リアルに得する経済学”をおもしろい…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録