(※写真はイメージです/PIXTA)

採用選考で面接は最もポピュラーな手法ですが、意外にも「面接は評価精度が高くない手法」です。しかし、なぜこれだけ多くの会社で面接による選考が行われているのでしょうか。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

事前情報が見極めのブレや偏りを生む

■面接前に資料はどこまで読み込む?

 

ここでいう「事前資料」には2種類あります。一つは候補者が提出してきたエントリーシートや職務履歴書、もう一つは前の選考で面接者が付けた点数や評定、備考といった採用側の書類(面接評定表)です。

 

重要なものではあるのですが、私はこれらの情報を事前に読み込まない方がよいかもしれない、と考えています。候補者本人の自己認識や前段階の評価などによって心理バイアスがかかり、見極めにブレや偏見が生じる可能性があるからです。

 

とはいえ、全ての面接担当者が数十分~1時間ほどの面接の中で、事前情報なしに相手の全てを見定め、自社に適した人材かどうかを判定することは、現実的に難しいでしょう。

 

では、面接担当者はどのような事前情報をどの順番で扱い、どのように読み込んでおくべきでしょうか。

 

まず、「事実」の把握が何よりも重要です。ここでいう「事実」とは、動かしがたい属性――例えば、新卒採用の学生ならば学校・学部・専攻・クラブ・サークル・アルバイトなどです。

 

「事実」の重要性については以前にも触れましたが、もし事前資料になければ面接時にできるだけ定量的に質問して、「事実」を深く掘り下げることが必要なくらい大切です。

 

例えば「4年間、ある編集プロダクションでアルバイトをし、最終的にはチーフを任された」という「事実」があれば、その会社の規模はどのくらいか、何の雑誌を作ってどれくらいの発行部数か、実際に行った業務はどんなものだったかなどを聞いていくための資料として、事前情報を利用します。

 

これらの「事実」にもとづく質問と回答だけで、ある程度信頼性のある評定が可能です。これは中途採用に関しても同様です。

 

一方、「評価」については「事実」より後回しにすべきです。

 

ここでいう「評価」には、候補者本人による自己評価と、面接担当者による社内評価の両方が含まれます。例えば候補者からの情報であれば、まずは「事実」を確認した後で、彼/彼女の「私の強みは〇×です」といった「自己評価」を聞き、そのうえでギャップ(差)があるかないかをチェックして見定めます。

 

社内の面接評定表であれば、前の面接担当者による「この候補者はボーダーライン上」「内定候補に値する」といったものが、「評価」にあたります。

 

この評価については、前の担当者と自分との評価に大きなギャップがあった場合、「自分に心理バイアスがかかっているのではないか」ということを鑑み、見極めの精度を確認するよい機会となります。

ポイント
•事前情報を入れすぎると見極めにブレや偏りが出ることがある。
•まず「事実」を押さえ、不足なら質問で深掘りする。
•「自己評価」「社内評価」は「ギャップ」を見るために使う。

 

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長

 

 

※本連載は、曽和利光氏の著書『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

採用面接100の法則

採用面接100の法則

曽和 利光

日本能率協会マネジメントセンター

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