(※写真はイメージです/PIXTA)

「名ばかり管理職」。役職者でありながら、権限も報酬的な手厚さもほぼないようなポジションが、日本の職場には存在しています。日本社会の構造が生んだといえる、グレーな地位。忍耐だけでやり過ごすにはあまりに理不尽です。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、管理職への非道な対応の違法性について勝浦敦嗣弁護士に解説していただきました。

実働後の給料変更で実質減給。違法ではないの?

相談者のぷりん(仮名)さんは、契約社員。現在、試用期間ですが、10月から管理職になりました。

 

管理職になったといっても名目だけのことであり、それまでと業務内容に変更はなく、部下もいません。管理職になるにあたって、雇用契約書の交わし直しもありませんでした。

 

ところが、〈11月実働分から管理職手当を支給する。代わりに残業代・休日出勤代を支給しない〉との通達が、当月になってなされました。

 

ぷりんさんは「実働後の給料変更の通達は、そもそも違法ではないのか」と、会社に対する不信感しかありません。しかも、管理職手当は10月実働分の残業代の30%にも満たない額です。参考までに、10月の実働分は管理職手当ではなく、超過残業代が支給されていました。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に、このような会社の対応に違法性はないのかについて相談しました。

「管理監督者」に該当するか否かがポイント

今回の会社の対応は、①管理職手当が新たに支給されることになった、②その代わり、残業代・休日出勤代が支給されないことになった、という2点に分けられます。

 

このうち、①管理職手当が新たに支給されることになった、という点は、賃金の増額であり、ぷりんさんに不利益が生じるものでもないので有効ですし、そもそも争う必要もありません。

 

問題は、管理職になったことを理由に、②残業代・休日出勤代が支給されないことになった、という点です。

 

ここで、ぷりんさんが新たに管理職になり、労働基準法41条2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」=「管理監督者」に該当することになったのであれば、会社はぷりんさんに対し、時間外割増手当や休日割増手当を払う義務がないことになります(なお、深夜割増手当については管理監督者にも発生します)。

 

しかし、管理監督者に該当するか否かは、役職名で決まることでもなければ、会社が一方的に決められるものではありません。実際の職務内容や権限等が管理監督者としての実質を備えているかという観点から判断されます。

 

ぷりんさんの場合、それまでの業務と変更はなく、部下もいないということですので、管理監督者に該当する可能性は極めて低いと思われます。

 

つまり、10月以降は、管理職手当を受け取りつつ、さらに時間外割増手当や休日割増手当も請求できることになるはずです。

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