ほぼ家事をせず、働く気もない妻と離婚したい
会社役員を務めている相談者(男性)は、結婚30年目になる妻との熟年離婚を考えています。
相談者は現在、単身赴任で仕事をしており、たまに本宅へ帰ることはあっても妻とは必要最低限の会話しかしていません。
妻はほとんど家事をせず、部屋はゴミ屋敷のようになっており、30年間食事を作ることもありませんでした。また妻自身が働く気がないのにも関わらず、宗教活動に金を使うなどのこともあり、相談者はかなり前から愛情が冷めている状態です。
実際に数年前、相談者の子どもの大学進学に関する資金に関して妻と揉めて、お互い離婚届に署名捺印をしていました。
しかし「独り立ちするまでは」と子ども達に説得され、離婚するまでには至っていないそうです。
この件以降、相談者が家計を管理するようになりましたが、相談者の親の介護で多額の費用が必要になっていても、妻は夫婦の預金から費用を捻出するつもりはなく「私の金だ」と一点張りをしています。
現在、相談者名義の預金はないどころか、教育ローンや住宅ローンでマイナスになっています。さらに相談者の親の介護で月20万ほど必要なので、いち早く妻と別れて今後の生活に向け行動したいと思っているそうです。
そこで、上記の様な状況で裁判所は離婚を認めてくれるのかが知りたく、ココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。
相談者は、離婚をすることができるのでしょうか。また離婚できる場合、有利に進めるためにすべきことはあるのでしょうか。
裁判所が離婚を認めない可能性は“十分ある”
まず、相談者が離婚をしたいと思っている理由(離婚理由)を確認します。
相談者の離婚理由は、①妻と最低限の会話しかない、②家事をほとんどしない(30年間食事を作らない)、③部屋がゴミ屋敷のようになっている、④働かない、⑤宗教活動に金を使う、⑥子どもの大学進学に関する資金で妻と揉め事があった、⑦相談者の親の介護費用を捻出させてくれない、というものです。
相談者の相談は裁判所が離婚を認めてくれるかというものですので、その点に回答をいたします。
結論から申し上げると、残念ながら、裁判所が離婚を認めないことも十分ありえます。
といいますのも、裁判所が離婚訴訟で離婚を認めことができる理由は、民法770条1項に5つ規定されています。離婚訴訟で離婚を求める原告(相談者)は、これらの規定にあてはまることを訴訟で主張し、立証していく必要があります。
5つの規定とは、次の通りです。
1. 配偶者の不貞な行為があったとき(770条1項1号)
2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき(同条同項2号)
3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(同条同項3号)
4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(同条同項4号)
5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(同条同項5号)
今回の相談者の離婚理由①から⑦は、770条1項1号から4号に直接あてはまるものではありません。
そのため、離婚訴訟では、①から⑦が5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかが主たる争点となることが予想されます。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、「婚姻関係が破綻し、回復の見込みが全くない状態」をいうものとされています。
これを本件についてみますと、確かに、①から⑦の事情からすれば、全く円満な夫婦関係とまでは言えないとは思います。
しかしながら、①~⑦の事情があるからといって、誰もが「この夫婦は破綻していて、回復の見込みが絶対にない」とまで言える状態にはないと考えます。
そのため、訴訟において、裁判所が離婚を認めないことも十分ありえるのです。