世界中に愛される日本のアニメ
■日本人の物語力は実は凄い
ストーリーテリングは、横文字言葉ですが、実は日本人の物語力にはすごいものがあります。古くは、「古事記」で、その物語は、天地創造から始まって、天照大神が生まれ、その子孫である天皇家にまつわる出来事が語られていて、その天皇家は二千年程続いていて、現代では世界最古となっています。
紫式部による「源氏物語」は、世界最古の長編小説ですし、作者不詳の「平家物語」は、平家滅亡の長編物語ですし、江戸時代には近松門左衛門や十返舎一九等が浄瑠璃や歌舞伎・滑稽本を書きました。明治以降は、欧米風の小説が書かれ、森鴎外や夏目漱石が出て、川端康成は戦後ノーベル文学賞をもらいました。『ノルウェイの森』等の小説で有名な村上春樹も海外で翻訳され、1千万人以上の読者に読まれています。
また、ディズニーのライオンキングは、手塚治虫の『ジャングル大帝』のパクリだと批判され物議を醸しましたし、映画『マトリックス』は日本のアニメが影響を与えたと言われていますし、SFアクション映画『トランスフォーマー』も日本の同名の玩具が元となっています。また、ゲームとアニメのポケットモンスターは、世界中で何億人もの人たちに楽しまれています。
このようにみてくると、日本及び日本人の物語力は、世界レベルでみても、高いことが分かります。ですので、皆さんの中にも物語力が潜んでいるかもしれません。
■私たちはストーリーという人生を生きている
実は、私たちの人生は、自分で紡いでいるストーリーとも言えるのです。もちろん主人公は自分自身です。皆さん、自分の生い立ちから始まって、幼少期、少年期、青年期、壮年期と、自分がどんな想いを持ちながら、その時々を過ごしてきたのか、どんな夢や希望を持って頑張ってきたのか、どんな山谷があったのか、どのようにして苦境を脱してきたのか等、いろいろなエピソードが語れますよね。
映画も、一本の映画が全体で1~2時間程度ありますが、ビデオを借りて見ると、その中は、数十のエピソードから構成されているのが分かります。私たちの人生も、そうしたいろいろなエピソードから成り立っているストーリーということができます。
ですから皆さんも、自分について語る時に、人生の1ページを開いて、そこでのエピソードを、物語の要素をきちんと入れて語れば、自分についてのストーリーテリングができるのです。そして、それらのエピソードは、人生のエンディングに向けて、自分でも予想しきれないストーリーで展開していくことになります。
■語り方を身につけられると、強い武器になる
物語は、語り方によって、面白くも退屈にもなります。
よく、研修の中で、受講者の皆さんの印象に残った体験談を語ってもらうのですが、聞き手にどの程度印象に残ったかで、相互投票を行うと、票に偏りがでます。皆さん、それぞれが、自分の人生で印象に残ったことを話しているのに、他の人に聞いてもらうと、印象の度合いに大きな差が出るのです。
多くの人は、それはエピソード自体のドラマ性の違いではないかと思われると思いますが、必ずしもそうでもないのです。タイトルがドラマチックであっても、印象に残りづらいエピソードもあります。また、逆に、タイトルは大した話ではなさそうなのに、ぐっとくる話もあります。
それは、実は語り方の違いなのです。自分にとって印象に残っていても、淡白に語ってしまえば、薄い印象しか残りませんし、ドラマチックに語れば、強い印象が残ります。つまり、同じエピソードでも語り方によって相手に伝わる印象が大きく異なるのです。
ですから、皆さんも、自分の体験そのものを変えることはできませんが、その語り方を変えることで、聞き手にインパクトのある話にすることができるのです。