人を動かし、組織を動かし、国を動かす
■ストーリーテリングが効果的な7つのシチュエーション
このようにストーリーテリングは、人を動かし、組織を動かし、国を動かすのに有効なわけですが、本連載では、ビジネス・ストーリーテリングということで、ビジネスの場面で有効なストーリーテリングの使い方についてお話をしていきます。
一般にストーリーテリングは、以下の7つのシチュエーションで効果的と言われています。
(1)自分を理解してもらう
…自分が何者であるか、どんな人物であるか、その人柄を他人に分かってもらうのに効果があります。
(2)価値観・大切にしていることを伝える
…自分やチーム、組織が大切にしていること、それが価値観です。その価値観は、例えば「安全・安心」等言葉で言ってしまうと平凡に感じられてしまうことも、ストーリーテリングによって、しみじみと深く浸み入らせることができます。
(3)変革のための行動を引き出す・考えを変えさせる
…変革というと大げさですが、例えば、相手に意識や考え方を変えてもらうのに、単に「考えを改めろ」と言っても、改まりませんが、ストーリーテリングによって、相手の認識や考えを改めさせることができます。
(4)未来に導く
…現状が厳しいと、ついつい下を向いてしまいます。しかし、そう思って何もしないでいると、さらに状況が悪化します。そうではなく、今よりもよい未来、目標に向かって歩き出すために、未来のことを語る=未来語りをすると、聞いている人たちの気持ちを変え、未来に向けた行動を引き出すことができます。
(5)共同作業を促す
…一人では仕事は完結できませんが、他人と協力して取り組むのは、少し面倒くささが伴います。その面倒くささを振り払って、共同作業に大きく踏み出すためには、一緒にやった方がいいことがあると思ってもらえるようなストーリーテリングを行うとうまくいきます。
(6)ナレッジマネジメント(知恵を共有する)
…自分の得意な技・ノウハウは人に隠しておきたいものです。ただ、いざ必要に駆られてそれを共有しようと思っても、なかなか頃合いの表現が見つからず、うまく説明できません。そういう時は、うまく行ったときのことをストーリーテリングで表現すると、言葉にできない部分まで相手に伝えることができます。
(7)プレゼンテーション
…プレゼンテーションには、全体を通してのストーリー性が求められます。起承転結のような全体構成を検討してから、ディテールの造り込みを行うようにすると、うまくいきます。
この他にも効果的なシチュエーションはまだありますが、本連載では、この7つについてストーリーテリングの仕方を紹介していきます。
井口 嘉則
オフィス井口 代表