写真提供:オオカワ建築設計室 写真:haga gensho

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回は、寒すぎる日本の家が健康に与える様々な影響についてみていきます。

室温が低い家では「コレステロール値」が高くなる⁉

『得られつつある知見-4』では、「室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い」ということです。[図表4]に示すように年齢、性別、世帯所得、生活習慣を調整した上でも、朝の居間室温(床上1m)が18℃未満の住宅(寒冷住宅群)に住む人の総コレステロール値、LDLコレステロール値は、温暖住宅群(18℃以上)有意に高く、また、心電図の異常所見が有意に多いのだそうです。

 

[図表4]

「室温が低い家」では「夜トイレに起きる回数が多い」

『得られつつある知見-5』では、「就寝前の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状を有する人が有意に多い。断熱改修後に就寝前居間室温が上昇した住宅では、過活動膀胱症状が有意に緩和される」ということです。

 

過活動膀胱というのは、あまり聞きなれない言葉ではないかと思います。「急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)」、「トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)」、「急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある(切迫性尿失禁)」などの症状を示す病気だそうです。国内の40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状をもっており、患者数は約800万人以上とも推計されているそうです。過活動膀胱によって、睡眠質の低下や、夜間に寒く、暗い中でのトイレに行く途中で転倒、循環器系疾患の発生確率が高くなるとされています。

 

夜中に何度もトイレに起きるのは、もちろん睡眠の質に悪影響を及ぼします。睡眠の質は、QOL、つまり生活の質にも直結することは言うまでもありません。

 

断熱改修前の現状分析の結果、就寝前の室温が12℃未満の低温の住宅では、18℃以上の温暖な住宅と比較して、過活動膀胱症状を有する人の割合が1.6倍だったそうです。

 

さらに、[図表5]に示すように、断熱改修後に、過活動膀胱症状は、就寝前室温が上昇した住宅では0.5倍に抑制され、逆に室温が低下した住宅では、1.8倍に上昇しているということです。

 

[図表5]

 

つまり、夜中にトイレに起きる回数が多くて悩んでいる方は、断熱改修工事を行うことで、トイレに起きる回数が減る可能性が高いということのようです。

 

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