写真提供:オオカワ建築設計室 写真:haga gensho

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回は、寒すぎる日本の家が健康に与える様々な影響についてみていきます。

ヒートショックによる死亡は交通事故死の7.2倍

以前、住宅の断熱性能不足により、家の中の温度差に起因するヒートショックで、我が国で約19,000人/年もの方が入浴中に亡くなっていることご説明しました(関連記事:『日本の家「寒すぎる脱衣所」…年間“約1.9万人”が亡くなる深刻』)。2021年の交通事故死者数は2,636人でしたから、交通事故死者数のなんと約7.2倍にも上る人数です。

 

そしてさらに、この2~3倍にも上る方々が、ヒートショックで倒れて命を取り留めても、後遺症で半身不随や車椅子の生活を余儀なくされているとも言われています。

 

筆者のところにも、今の家がとても寒く、ヒートショックリスクが心配なのでなんとかしたいということで、建て替えや断熱リノベについての相談が多数寄せられています。

高断熱化による居住者への健康影響の知見、蓄積進む

家の断熱性能不足は、ヒートショックだけではなく、様々な健康リスクへの悪影響があることがわかってきています。国土交通省の支援により、「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」が平成26年から行われており、その調査結果の中間報告が平成31年に公表されています。この中間報告では、7つの健康への影響が『得られつつある知見』として、報告されています。

 

この中間報告の内容を中心に、住宅の断熱性能が主に高齢者の健康にとても重要であることを説明します。

1年を通じて室温が安定する住宅…居住者の血圧の変化

この中間報告によると、まず『得られつつある知見-1』として、「室温が年間を通じて安定している住宅では、居住者の血圧の季節差が顕著に小さい」ということが報告されています。

 

起床時の居間平均室温が冬18℃以上・夏26℃未満の住宅を「室温安定群」、冬18℃未満・夏26℃以上の住宅を「室温不安定群」と分類したところ、室温安定群の方が最高血圧、最低血圧ともに季節差が顕著に小さく、安定していたということです。

 

特に、最高血圧の季節差は、[図表1]に示すように、「室温不安定群」が9.8mmHg差であったのに対して、「室温安定群」では、2.3mmHgにとどまっています。

 

[図表1]

 

もちろん、年間を通じて、室内の室温を安定させるためには、住まいの高気密・高断熱化が望ましいことは、説明するまでもないと思います。

 

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