日本の住宅は、省エネ基準が不十分なこと等により、他の先進国と比べて「驚くほど寒く」なっていることをご存じでしょうか。ここでは、日本の住まいにおける「ヒートショック」の実態や、「住まいと健康の深い関係」について、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が解説していきます。
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惑わされてはならない…“次世代省エネ基準”を謳う広告
日本には、住宅や住宅以外の建築物(非住宅建築物)の断熱性能等について定めた「省エネ基準」が存在しています。
延べ床面積が300㎡以上の非住宅建築物は、新築時、省エネ基準に適合することを義務付けられています。しかし現段階において、住宅の適合は義務付けられていません。
日本以外の先進国でも、住宅・建築物の断熱性能等について省エネ基準が定められており、他国では住宅にも基準適合が義務付けられています。ちなみに日本は2025年までに遅ればせながら、戸建住宅の適合が義務化される予定です。
我が国の住宅・建築物の断熱性能等の基準は、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)に基づくもので、あくまでも「省エネ」という観点からの基準になっています。
先進国中で最低水準の緩い基準であることは、第1回の記事で説明した通りですが、例えば、我が国の省エネ地域区分の6地域(東京・横浜・名古屋・大阪・福岡等)に要求されている断熱性能の基準である「外皮平均熱還流率基準」は0.87[W/㎡・K]ですが、この基準は、同じ気候区分で比較しても、韓国、イタリア、米国カルフォルニア州に比べて大幅に緩い基準になっています。
最新の基準は「平成28年基準」と呼ばれるものですが、この基準が要求している性能レベルは、20年以上前の基準である「平成11年基準」(別名:次世代省エネ基準)とほとんど変わっていません([図表1]参照)。
いまだに、「次世代省エネ基準レベルの高断熱住宅!」と謳う住宅の広告を目にします。知らない方は、すごい高性能住宅のように思われるかもしれません。しかし「次世代省エネ基準」とは20年以上前の基準で、他の国と比較するととんでもなく低い性能レベルです。この表現に騙されないよう、ご注意ください。
住宅の断熱性能は、省エネや省CO2だけでなく、居住者の健康や快適性とも密接な関係を持ちます。そうした観点から、欧米の多くの地域では、「最低室温規定」といわれる基準が定められています。
住まいるサポート株式会社 代表取締役
一般社団法人日本エネルギーパス協会 広報室長
神奈川県出身。東京大学修士課程(木造建築コース)修了、同大博士課程在学中。千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に「結露のない健康・快適な住まいづくり」のサポートを行っている住まいるサポート株式会社を起業。日本でトップクラスの性能を誇る工務店・ハウスメーカーを厳選して提携し、消費者に無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」や、デザインと高性能を両立する設計を行う建築家のマッチングサービス等を提供。また、横浜市住宅政策課主催のセミナーや毎日新聞社主催のセミナー等、多数のセミナーに登壇、メディアへの出演など、高性能な住まいづくりに関する情報発信に積極的に取り組んでいる。住まいづくりを考えている方々への情報発信を通して、ひとりでも多くの方が、住宅の性能に関する基礎知識を持ち、他の先進国並みに「結露のない健康・快適な家」を普及させることを目標としている。主な著書に、「元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家」(クローバー出版)、「人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい: 建築家と創る高気密・高断熱住宅」(ゴマブックス)など。
●高性能な住まいの相談室:https://sml-support.com/lp
●建築家と創る高気密・高断熱住宅:https://sml-support.com/archicon
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