(写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナによるパンデミック、ウクライナ戦争、米中対立の激化などにより、世界経済の「急減速」が続いています。しかし、そのようななかで2023年の日本経済は先進国のなかでもっとも「底堅い」1年になるだろうと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は予測します。その理由と、2023年の世界経済見通しについて、武者氏が解説します。

米国ファンダメンタルズは堅調

インフレはピークアウト、FRBは断固とした利上げによりインフレマインドのスパイラル拡大にキャップをかけた。ターミナルレートは5%を超えていくが、そのもとでも米国景気は、雇用・投資・企業利益等が堅調でソフトランディングの可能性も残されている。

 

実質賃金はマイナスだがコロナ禍の下で潤沢になった貯蓄と好調な雇用環境(給与・賃金)、財政政策の寄与により、消費は容易に失速しないだろう。

 

米国企業はインフレにより10%近い増収が続き、賃金も上がるが企業の価格決定力も健在で、ドル高による海外利益の換算益減少を除き、利益率が大きく下がる要素は少なく、高水準の利益が維持されるだろう。

 

[図表11]米国長短金利と名目GDP成長率推移
[図表11]米国長短金利と名目GDP成長率推移

 

[図表12]米国市場と経済のアンカー健在
[図表12]米国市場と経済のアンカー健在

 

オーバーキル回避できるか…2条件(長期金利、司令塔の思想)の吟味

FRBのインフレ抑制優先姿勢によりオーバーキルに陥るのか、回避できるのかの見極めが重要である。筆者は、

 

①潤沢な貯蓄クッションとドル高により長期金利がはっきりと低下趨勢を示しているこ

②FRB、米財務省という指令塔は、(パウエル議長がどのようなレトリックを弄しようとも)本質的にデフレのリスクをより強く認識していると考えられること

 

の2点により2023年の前半に金融政策の大転換が起きると想定する。

 

急速な利上げが、家計やシャドウバンキングの債務コストの上昇をもたらし、企業・金融破たんを引き起こす連鎖には留意が必要だが、個別破綻がシステミックリスクに転化しそうな気配があれば、FRBは落下傘的救済措置を取るだろう。バブル崩壊論者が待望するようなcatastropheは起きそうもない。

 

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※本記事は、武者リサーチが2022年12月19日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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